日本の初期映画を見る
フィルムセンターで早稲田大学演劇博物館所蔵の古い映画を上映するというので、行ってみた。見たのは1909年から1916年までの5本。各作品の上映前に短い解説があって助かった。
どの映画も浄瑠璃の映画化など、当時は一般に知られていた題材らしいが、今見ると全くわからない。女性は女形が演じているので、歌舞伎と同じだ。『朝顔日記』(09)に至っては、いわゆる「女芝居」で女性ばかりが男も女も演じる倒錯ぶり。
そのうえ、一場面しか残っていなかったりする。それでも桜田門外の変を描いた『桜田血染めの雪』(09)では、画面全体に桜が舞う中での襲撃を楽しんだし、『松王下屋敷』(10)は、主君を救うために自分の息子を投げ出すラストに心が動かされた。
『生かさぬ仲』(16)は唯一の現代劇だが、これも女性は女形が演じていた。カーチェイスがあったり、手紙が出てきてその半分が破れて列車が写るなど、実験的な要素もある。この時代になると監督名が出ていて、これは井上正夫監督作品。
『雷門大火 血染の纏』(1916)は尾上松之助主演の時代劇で、痛快な立ち回りが楽しめる。海岸をバックにした奥の深い画面など、ロケを使った撮影の工夫もあった。
グリフィスが最初の映画『ドリーの冒険』を作ったのが1908年で、膨大な短編を重ねてゆくうちに、1915年に『国民の創生』を作ったから、これらの映画とまさに同じ時代だ。グリフィスに比べたら、サスペンスもないし、クロース・アップもない。ずいぶんプリミティブな感じだが、これがたぶん1920年代後半には小津や溝口のサイレントを見ればわかる通り、いつの間にか世界水準に達するのだろう。その過程をもっと知りたい。
それから7階の展示室でチェコの映画ポスターを見て、仰天した。これについては後日書く。
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