« 中曽根の自伝を読む | トップページ | 音楽の展覧会の難しさ »

2013年11月13日 (水)

チェコの映画ポスターに驚く

フィルムセンターの7階で12月1日まで開かれている「チェコ映画ポスター展」に触れておきたい。映画のポスターというのは、普通は作品の魅力を最大限に見せて、「映画を見たい」と思わせるものだ。ところがこの展覧会に並んでいるポスターは、全く違う。

例えばチラシの表紙にもなっている、ロベール・ブレッソン監督の『やさしい女』(1969)のポスターは度肝を抜く。女性の横顔だが、ブロンドの髪に覆われて耳だけが出ている。大きな青いネックレスに背景は黒。ほとんどマグリットの絵画の世界に近い。ここにリンクを貼っておくので、ぜひ見て欲しい。

展覧会は3部構成で、チェコ映画、日本映画、世界の映画に分かれている。チェコだとさすがに知らない映画が多いが、ミロシュ・フォルマンの『ブロンドの恋』などもある。シュヴァンクマイエルの『庭園』は、自分でデザインしている。全体にロシア構成主義やシュルレアリスムの影響が濃厚だ。

それは日本映画でも変わらない。『羅生門』は真ん中に食いしばった葉があり、下には小さな羅生門、左上に赤い血の滴。赤以外はモノトーンで、まるでベケットの不条理劇のポスターのようだ。いったいこれで行きたいと思う客はいるのかと心配してしまう。『天国と地獄』に至っては、目のアップとピストルで構成されていて、ロシアアヴァンギャルドそのものだ。

世界の映画も同じ。作品と雰囲気が近いのはアントニオーニの『夜』くらいか。黒をバックに分裂した身体を白抜きで見せて、アントニオーニの不条理な世界が伝わってくる。あとはもう、やりたい放題という感じ。

2年前の今頃プラハに行った時、シュヴァンクマイエルは自分のアトリエで、「私は永遠のシュルレアリストだ」と語ったのを思い出す。チェコでは、1920年代にヨーロッパに広がったシュリレアリスムを始めとする前衛芸術運動が何十年も続いたのだと、この展覧会を見て実感した。

長年続いた社会主義体制は、むしろその前衛精神の維持に役だったのかもしれない。社会主義は、実は奥が深い。

|

« 中曽根の自伝を読む | トップページ | 音楽の展覧会の難しさ »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/58565601

この記事へのトラックバック一覧です: チェコの映画ポスターに驚く:

« 中曽根の自伝を読む | トップページ | 音楽の展覧会の難しさ »