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2013年11月22日 (金)

デパートの誘惑

私はデパートが好きだ。もちろん僕らの世代は、子供の頃に「デパートに行く」ことが最大の娯楽だったこともある(田舎だけかもしれない)。そんなわけで、昼間の空いた時間に映画館で『ニューヨーク バーグドルフ 魔法のデパート』を見た。

バーグドルフは、ニューヨークの5番街にある「バーグドルフ・グッドマン」というデパートのこと。アメリカで最もゴージャスな服や宝飾を扱う店という。私は行ったことがないが、今年見た『ビル・カニンガム&ニューヨーク』が何とも魅力的だったので、期待して見た。

感想を一言で言うと、出てくる人の数が多すぎて、目まぐるしかった。誰かに焦点を当てるのではなく、多くのデザイナーや関係者がこのデパートに賛辞を送る。出てくる人の肩書を見ているともう次の人が出てくるといった具合で落ち着かない。ビル・カニンガムという極めてチャーミングな人物から見たニューヨークとは違う。

ジュルジオ・アルマーニやドルチェ&ガッバーナ、マーク・ジェイコブズ、カール・ラガフェルドなど私でも名前を知っているデザイナーが、口々にこのデパートを讃える。だがいかんせん短すぎる。だから言葉の中身よりも、アルマーニやラガフェルドの老いた姿の方が気になってしまう。

おもしろかったのは、リンダ・ファーゴという名のバイヤーとベティ・ホールブライシュという名物販売員を追った部分。リンダはデザイナーのもとを訪れて、慎重に吟味しながらアドバイスも出す。彼女に選ばれるかどうかで新人の将来が決まるというのがよくわかる描き方だった。

ベティは皮肉たっぷりのトークで、顧客を魅了する。白髪でおそらく60歳を超えているだろうが、パッチリとした目の輝きや颯爽とした身のこなし自体がカッコいい。こんな販売員がいたら買ってしまうなと思った。それからディスプレイ責任者デヴィッド・ホイが、動物を使った展示をするのを準備から完成まで見せた部分も良かった。

映画の最後に、このデパートが1972年に売却されて、今はニーマン・マーカスというグループに属するというクレジットが出て驚いた。ニーマン・マーカスと言えば、ダラスの本店をフレデリック・ワインズマンがじっくり描いた珠玉のドキュメンタリー『ザ・ストア』(1983)があるではないか。

こちらはデパートそのものを主人公としたように、店内のあらゆる場所にカメラを置いて、その全容を見せてくれた。今回のバーグドルフの映画には、その深みはない。

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