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2013年11月12日 (火)

中曽根の自伝を読む

ふと思い立って、中曽根康弘著『自省録』を読んだ。数年前になぜか買っていた本で、本棚の整理をしていたら前に出てきたので手に取った。最近、野中広務の『老兵は死なず』がおもしろかったせいもある。

結論から言うと、途中まではおもしろかったが、後半は飽きてしまった。戦後の政治の歩みを自分がどうとらえていたか、戦後の有名な政治家やサミットで出会った各国首脳の横顔を描くあたりまでは興味深い。ところが後半の総理になってからの話や自分の現在の心情を語る段で、退屈になる。

中曽根は、長い間「風見鶏」と呼ばれてきた。要するにどちらにつくと得かを考えて、コロコロ方針を変える政治家と思われてきた。そうして誰よりも長生きした。つまり田中角栄も、福田赳夫も大平正芳も竹下登も鈴木善幸もみんな死んだのに、彼だけが生き延びた。この本には、今になって自分が一番正しかったような顔をして語っている感じがある。

何より一番おもしろいのは、序章で小泉が首相時代に中曽根に衆議院議員を辞めてくれと来たくだりだ。中曽根は「自民党終身比例代表一位」だったが、小泉はそれを降りてくれと言いに来た。本当かどうかわからないが、その会話の一部始終が再現されている。

「おい、敬老精神が、ないじゃないか。君のおじいさんには有名な政治家がおられたが、彼は党員のこういう気持ちを一番尊重した方だ。総理総裁の仕事というものは、党で働いた者の使命感や政治的信念というものをよく考えることではないか。使命をまっとうさせるために、できるだけ居させてあげるというのが総理総裁の道だろう。その点からも容認できない。考え直してくれ」/小泉君には、情愛というものがありません。

明らかに中曽根は論理的ではない。その話を「総理大臣の資質」として序章に持ってくるあたりは、本当に怒っているということだろう。たぶんこの本は、自分を外した小泉は総理の資質に欠けていたと書くために書いたのかもしれない。

もちろんおもしろい細部も多い。彼は真珠湾攻撃は不当ではなく、欧州ではよくあることと言い、「純粋に法学的見地からすれば」原爆投下は国際法違反だと書く。

総理になる前の十年間、朝日新聞の三浦甲子二のアドバイスで役職に就かず、読売のナベツネや氏家と勉強会をしていたこと、田中角栄がロッキードで倒れたのは、独自にアラブから石油を買いつけようとしてアメリカを怒らせたことが原因だと思うこと等々。

終わりは自己満足の世界で読むに堪えない。自慢ばかりする年寄りにはなりたくないと思った。私は危ない。

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