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2013年11月17日 (日)

カイユボットの描くパリ右岸

京橋のブリジストン美術館は、印象派を中心とした所蔵作品が有名なために、いつもコレクションだけを見せているイメージがある。ところが、時おりビックリするような展覧会をやる。12月29日まで開催中の「カイユボット展~都市の印象派」がそうだ。

ギュスターヴ・カイユボット(1948-1894)は印象派の画家としていつも名前を聞くが、ちゃんと意識して見たことがなかった。今回の展覧会が日本初の回顧展というから無理もない。印象派の中でも、光の表現を追求したルノワールやモネに比べて、特徴が見えにくいこともある。

今回の展覧会では、そのカイユボットの絵画が63点も並んでいる。フランスをはじめとして、ドイツ、米国、オーストラリアなどから作品が集まっている。加えて、音楽家で写真を趣味としていた弟のマルシャル・カイユボットが撮った小さな写真が100点。さらに「参考作品」として、ブリジストンが所蔵するルノワール、マネ、モネ、ピサロ、セザンヌなどの絵が、関係のある場所に展示されていて、見ごたえ十分の大展覧会。

その絵の特徴は、「優雅」「エレガンス」というような言葉で言い表せるかもしれない。《ヨーロッパ橋》(1976)に見える橋を渡る男女や欄干で川を見る男からは、豊かな都市生活が浮かぶ上がってくる。あるいは《シルクハットをかぶったボート漕ぎ》(1877)の蝶ネクタイをしてチョッキを着た男の余裕ある顔つき。弟のマルシャルを描いた《ピアノを弾く若い男》(1876、ブリジストン美術館所蔵!)のあごひげやスーツに見える優雅さ。

カイユボットと言えば、都市を描いた画家だと思っていたが、肖像画や室内画、静物画もあり、郊外の自然を描いた絵も多い。しかし、何を描いてもブルジョアジーの優雅な生活に裏打ちされている。それは弟が撮った写真も同じだ。都市ならではの憂いも感じられるが、苦悩というほどではない。

途中でパリの地図があって、描かれている場所がマークされていた。それを見て驚いたのは、すべてが右岸で、それもオペラ座近くだということだ。彼は裕福だったために、ほとんど自分の絵を売らず、むしろほかの印象派の画家の絵を買って助けていたらしい。彼の蒐集した絵は、オルセー美術館の重要なコレクションになったという。

私にとってのパリは、多くの日本人留学生にとってと同じように左岸だった。パリ第3大学も第7大学も、住んでいた大学都市もすべて左岸で、映画もほとんど左岸の映画館で見た。だからタイユボットの描くパリは、仕事を始めてから知った。

ある時、ルーヴル美術館の近くに泊まっていた私を迎えにきた映画評論家のジャン・ドゥーシェは、「右岸に変えたとは、生き方が変わったな」と言った。さほどにパリの左岸と右岸の差は大きい。

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