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2013年12月 2日 (月)

『かぐや姫の物語』は驚愕の連続

先日、『ペコロスの母に会いに行く』が今年一番泣ける映画だと書いたが、今年一番驚いた映画を見た。高畑勲監督の『かぐや姫の物語』。137分があっという間に感じられたほど、驚愕の連続だった。

何に驚いたかというと、カットごとの絵の作りに毎回ハッとさせられた。冒頭、翁が光る竹の子を取ると、そこに人形のような姫が現れて、あっという間にどんどん大きくなる。その急展開に目を瞠った。

風景の描き方が、横山大観などの日本画そっくりで、全部描かず余白だらけ。翁や媼などの登場人物は、まるで絵巻物から出てきたように滑稽で、見ているだけで嬉しくなる。姫は成長すると、鏑木清方の絵みたいだ。

姫が大きくなり、都に出るまでをあれよあれよと見ていたら、自分のお披露目の祭で怒りが爆発して走り出してしまうシーンに仰天した。荒々しい黒の線で、一目散に疾走する女を大胆に省略化して描く。雪舟の水墨画のような世界に、赤い衣服がかすかに見える。

田舎の風景や人々、幼馴染などを思い出しながら、都で我慢して暮らす姫がかわいそうになる。そこへ現れる5人の貴公子の求婚者たちのエピソードも、よくできていて飽きない。とうとうミカドまで現れるが、姫はなびかない。

そしてある時、月に帰らねばと打ち明ける。その前に田舎に帰って、幼馴染の捨丸と空を飛ぶ楽しさといったら。そして帰ってゆく時の、天竺から来たような観音さまたちの一群のえもいわれぬ有難み。

この映画を見ながら、監督の高畑勲さんの講演を聞いたことを思い出していた。アニメと絵巻物という題名で、パソコンから12世紀から江戸時代までの膨大な数の絵巻を見せながら、そのアニメ的手法を説明していた。今回の映画は、間違いなくそれらの一つ一つを血肉として作り上げたものだ。余白の美、人物造形のユーモア、物語の奇想天外さといった、日本美術の粋を集めたアニメになった。

公開2週目の週末だが、500席を超える劇場がほぼ満席。ポップコーンを食べる人も少なく、客筋が落ち着いていて、この映画にふさわしかった。これはもう1回見たい。

もう1つ。600円のパンフを買ったが、せっかくの絵がテカテカの紙で全く生きていない。800円でいいから、もっといい紙に刷って欲しかった。

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受信: 2013年12月 3日 (火) 00時39分

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