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2013年12月21日 (土)

本当のことを言おうか:『原発ホワイトアウト』

時々、暴露ものを読みたくなる。最近読んだのは、「現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!」とオビに書かれた若杉冽著『原発ホワイトアウト』。小説として出来がいいわけではないが、おもしろいのは間違いない。

何がおもしろいかと言うと、反原発運動を封じるために政財界が裏で組んで、見えないところで世論を変えてゆく手法が克明に描かれていることだ。

原発反対の新潟知事を辞めさせるのに、地元紙や週刊誌、そして検察を金で動かし、妻の実家が経営する会社への利益供与を暴露させる過程を読んでいると、誰でも犯罪者に仕立てられるのだなと思う。最後は首相が検事総長に依頼する場面まで仕組むのだから。

あるいは元局アナで福島出身の女性が、原子力規制庁の官僚と情を通じて盗聴マイクを仕掛けさせて、「朝経新聞」(朝日のこと)と「テレビ朝経」にスクープを仕組むくだりもリアル。それ以上にすごいのは、それが他紙や他局で後追いで報じられないように、各社を金で封じていく様子。

そうして新潟の知事もこの2人も逮捕される。一番怖かったのは、2人の捜査。原子力規制庁の全メールや防犯カメラを調べ上げるところから始まる。容疑者が出てくると、携帯電話会社から個人の通話記録、位置情報、メール、ネットアクセスを調べて、相手の女性を突き止める。LINEもグーグルもすべての情報を出して、彼らが行ったホテルなどすべてが明らかになる。その防犯カメラやクレジットカードの明細も出てくる。

時々出てくるエリート官僚の本音もすごい。反原発デモに対して、「それにしても大衆は常に愚かで、そして暇だ」。あるいは「最高学府とは東京大学のことをいうのではない。東京大学法学部のことをいうのだ。経済学部出身の小島が検察に働きかけたからといって何ができるのか」とつぶやく官僚。

読み終わって暗澹たる気分になったが、心配したのはこの偽名の著者は大丈夫だろうかということ。講談社との連絡はどのように取っているのだろうか。やはり情報化社会は恐ろしい。

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