« 今年も『カイエ・デュ・シネマ』ベスト10に驚く | トップページ | 『印税で1億円稼ぐ』に笑うも »

2013年12月12日 (木)

そして東京フィルメックスは続く:その(3)

東京フィルメックスについてもっと書こうと思っているうちに、時間がたってしまった。あれよあれよという間に12月半ばで、大学も授業によっては今週が最後。私のゼミ学生がやる映画祭も、この週末に渋谷で始まる。

フィルメックスはもはや彼方に行ってしまった感じだが、まだ触れていない映画について数行ずつでも書き残しておきたい。

コンペの『夏休みの宿題』は台湾のツァン・ツォーチ監督の作品で、10歳の少年が夏休みに田舎の祖父のもとで過ごすさまを描く。台湾映画にはよくあるテーマだが、この映画もウェルメイドだが驚きのない作品だった。友人の死、祖父の病気、両親の離婚といったできごとを少年の目から描いたもので、田園風景のロングショットやつややかな音楽が心地よい。

招待作品の3本についても触れておきたい。イスラエルのアモス・ギタイ監督『アナ・アラビア』は、85分をワンカットで描く。ユダヤ人とアラブ人が同居している地区で取材をする若い女性を追いかけたもので、次々に彼女に話をする老人たちが現れる。だんだん夕暮れに近づくなかで、だんだんある種の共感めいたものが湧いてくる。それにしても、「巨匠のスケッチ」という感じか。

『わたしの名前は……』は、デザイナーのアニエスベーの初監督作品。父親の呪縛から抜け出そうと、少女は旅に出る。そこで出会う英国のトラック運転手。冒頭に赤いトラックが出てきたところから、悪くない。少女の赤いTシャツやサングラスも洒落ていて、ちょっといい感じのロードムービーだった。少女の様子は明らかにヴェンダース映画だし、少女の父親の姿はゴダールを思わせるが。

気になるのは哲学者のアントニオ・ネグリが出てきて思わせぶりな発言をしたり、山海塾のような白塗りの舞踏のダンサーが出てきたりする、スノッブな部分。あるいは8ミリ映像が混じったりするのもあざとい。

台湾のツァイ・ミンリャン監督の『ピクニック』は、ベネチアに出た時に監督がこれで最後の作品と言った映画。前作の『ヴィサージュ』がフランスを舞台にしたせいかやりすぎた感じがあったが、今回は台湾が舞台で昔に戻った感じ。

サンドイッチマンの父とスーパーを試食品目当てにうろつく息子を描いたもので、見ていてつらい場面がえんえんと続く。父親は雨の中に立ちながら歌い続け、夜は息子とトイレで体を洗う。コンビニの弁当を2人で食べたり、父が1人でキャベツを食べたり。そこに時々現れては去ってゆく女。

138分は長かったが、異様な感触が長く心に残る秀作だ。ちょっとペドロ・コスタに近いかもしれない。後でこの映画が劇場公開されると聞いて驚いた。何という勇気!

|

« 今年も『カイエ・デュ・シネマ』ベスト10に驚く | トップページ | 『印税で1億円稼ぐ』に笑うも »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/58741612

この記事へのトラックバック一覧です: そして東京フィルメックスは続く:その(3):

« 今年も『カイエ・デュ・シネマ』ベスト10に驚く | トップページ | 『印税で1億円稼ぐ』に笑うも »