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2013年12月17日 (火)

また映画祭をやっているのと言われて:その(2)

私の場合、映画祭を始めたのは自分が見たい映画が上映されないからだった。だから自分がやった映画祭では、可能な限り映画を見た。それは、今自分の学生がやっている映画祭「監督、映画は学べますか?」でも同じ。

とりわけ今回は、今をときめく監督たちの大学の卒業制作や自主制作映画が中心なので、ほとんど見ていない。だから全部見ている。

土日では、2人の在日韓国人監督の映画が強く心を捉えた。1本は松江哲明監督の『あんにょんキムチ』(99)、もう1本はヤン・ヨンヒ監督の『ディア・ピョンヤン』(06)。ともに在日の自伝的ドキュメンタリーだが、印象は全く違う。

『あんにょんキムチ』は、自分が在日であることを友人たちに告白する場面から始まる。そのあっけなさといったら。ナレーションは妹で、時おり監督本人の声も交じる。監督の質問に答える祖母や父母、そして妹たち。「私だけがキムチが食べられなかった」といったユーモアがところどころに交じり、全体に能天気なムードが漂う。

それでも、日本国籍が取得できなかったのに墓に松江姓を刻ませた祖父のエピソードなど、ところどころに深刻な話が見え隠れする。父母や叔母たちに日本や韓国の国旗を持たせて選ばせたりといった図太いユーモアが持ち味だろう。写す対象の内側にするりと入っていく独特の映像感覚は、『ライブテープ』や『フラッシュバック・メモリーズ 3D』にもつながっている。

『ディア・ピョンヤン』には、後半泣いてしまった。松江監督は韓国系の3世だが、ヤン監督は北朝鮮系の2世で、父親は朝鮮総連幹部。そのせいもあってか、アプローチはストレートだ。

韓国出身なのに総連に属し、3人の息子をピョンヤンに帰国させた父を中心に物語は進む。何年にもわたって撮りためた映画なので、父親の変化がおもしろい。後半で父親は息子たちを送ったことを後悔し、娘には韓国籍への変更を認める。

終盤で病床にある父親の手を取りながら、父に向かって監督が語りかける映像は胸を打つ。考えは違っても、親子なのだと改めて思う。

北朝鮮の日常の映像も貴重だった。3人の兄はそれぞれ結婚してそれなりに豊かに暮らしているが、その表情はどこか暗い。クラシックが好きなっだ長兄の息子がピアノを弾いてみせるシーンが、妙に印象に残っている。久しぶりに在日問題について考えさせられた週末になった。

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