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2013年12月 8日 (日)

特定秘密保護法に考える

政治の話はしないのがこのブログの原則だが、今回の特定秘密保護法については、いろいろ考えた。この悪法が衆議院を通過した夜も参議院通過の夜も、いずれも北イタリア料理を食べていたが、それでも反対は反対だ。

不思議だったのは、朝日や毎日があれほど反対の記事を書いていたのに、読売が沈黙していたことだ。事情通に聞くと、読売(のナベツネ)はこの法律を通すバーター条件として、消費税値上げの際の新聞への軽減税率の適用を自民党に認めさせたからだという。

この「密約説」が本当かわからないが、参院を通過した翌日の朝日新聞の片隅に、確かに「新聞に軽減税率 自民207議員賛同」というベタ記事があった。つまり新聞は消費税アップの対象外になり、値上げをせずにすむということだ。これが本当なら、経営の為に身を売ったも同然だ。

部数が一番多い読売がもし徹底反対を唱えていたら、デモなどはもっと盛り上がっただろう。政府が無視できない規模になったかもしれない。と、デモにも行っていない私が言うのもなんだけど。

もう一つ、20年以上昔、自分が政府系機関の職員だった頃、「美術手帖」(当時はBT!)に書いたアート・サポートをめぐる記事が物議を醸した時のことを思い出した。内部で知り得た情報を公開する時には組織の許可が必要ということで、人事部長から大目玉をくらった記憶がある。準公務員だから守秘義務があるという。

いま読み返しても、書きぶりがシニカルなだけでどこにも「秘密」は書いていないが、公務員にはそんな「検閲」がある。それがこの法律ができることで、いよいよ強化されることになるだろう。飲み屋で大学の同期に話したことがネットに書かれて云々となりかねない。

そんな風潮は、公務員だけでなく企業にも広がってゆくに違いない。ひょっとすると大学にだって伝染するかもしれない。だから怖いのは、法律以上にそうした「秘密主義精神」の蔓延だと思う。

もう一つ。現在私は、カンヌやベネチアの国際映画祭のアーカイヴで1950年代の日本映画関連の資料を調査している。そこではあらゆる手紙やメモ書きが保存されていて外国人もアクセスが可能だ。出品が決まった経緯などが手に取るようにわかる。

今回の法案はこうした後年の歴史研究を妨げるような気がしてならない。映画祭ならたいした影響はないが、重要な外交資料が「機密」として隠蔽されたり、捨てられたりしたことはこれまでも多い。今度の法律でこれがさらに強化されるだろう。何だか本当に嫌な世の中になってきた。


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