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2014年1月 2日 (木)

冬休みのDVD

買った時は盛り上がっていても、すぐに授業か原稿で使わないDVDはそのまま見ないで本棚の奥に行ってしまうことが多い。そんなDVDを休みに2本見た。1本はジョルジュ・フランジュの『顔のない眼』(1959)、もう1本は鈴木重吉の『何が彼女をそうさせたか』(1929)。

どちらもある意味で呪われた作品だ。『顔のない眼』は1959年の製作で翌年フランスで公開され、日本でも公開されたにもかかわらず、どちらでもあまり話題になっていない。そもそもフランジュという監督自体、日本では一部の専門家やファンを除いて認知されないままになっている。

それが突如ブルーレイで出ているのだから驚いてしまう。偉いぞ紀伊国屋書店!さて見てみると、これがフィルムノワールとホラーが交じり合いながら端正で無駄のない作りで、さらに抒情もあって、全編目が離せない。

小冊子に黒沢清監督が「かつてホラーが怪奇映画と恐怖映画に分かれていた時代があって、後者の代表作として真っ先に挙がるのがこの『顔のない眼』だ。確かに幽霊もも怪物も出ないが物凄く恐い」と書いているが、その通り。

物語は、大怪我をして顔の皮膚を失った娘とそのためにほかの娘をさらってきて移植手術をする外科医の父親を描く。冒頭、車からのショットで夜の木々が写り、アリダ・ヴァリが顔を覆った娘を川に捨てるシーンからして怖い。

父親の邸宅のたくさんの犬もアリダ・ヴァリの作りもののような顔もマスクをつけた娘(エディット・スコブ)の顔も、なぜか怖い。そして移植手術で連れてきた娘の顔の皮膚を剥ぐシーンをえんえんと見せる。いや身も蓋もないとはこのこと。そして89分でピシリと終わる。

こんな傑作がどうしてあまり知られていないのかと考えると、やはりヌーヴェル・ヴァーグの影に隠れてしまったのではないかと思う。この映画が公開された1960年は前年にカンヌで賞を取った『大人はわかってくれない』や『勝手にしやがれ』が日本で公開された年だ。

そんななかで、ある意味できちんと作られた旧世代の映画は注目度が低かったのかもしれない。1912年生まれのフランジュに限らず、1907年生まれのアンリ=ジョルジュ・クルーゾー(『恐怖の報酬』)や1917年生まれのジャン=ピエール・メルヴィル(『サムライ』)などの世代は、どうも影が薄い。

ルネ・クレール、ジャン・ルノワール、ジャック・フェデールらの19世紀末に生まれてサイレントから撮ってきた巨匠と、1930年代生まれのヌーヴェル・ヴァーグに挟まれてしまった感じか。

『何が彼女をそうさせたか』については後日。

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