『楽隊のうさぎ』にホッ
新年からのさえない日々を軽やかに吹き飛ばすような映画を見た。鈴木卓爾監督の『楽隊のうさぎ』で、予告編を見た時から気にはなっていたが、低予算のちゃちな映画のような気もしていた。
確かに小品だが、この映画の持つ波及力は強い。物語は、中学生になって吹奏楽部に入った少年を中心に、演奏会に向けて練習をするさまを追ったもの。
たわいないといえばたわいないのだが、主人公が演奏会のメンバーに外れたり、小学校の同級生が不登校になったり、転校する友人が出たり、それぞれの小さなエピソードが生々しく、中学生の呼吸までもが伝わってくる。
何よりも、演奏することに次第に熱中し、実際にどんどんうまくなってゆく生徒たちの姿がいい。最後の演奏会の場面は、見に来た両親や先輩だけでなく、見ているこちらまでジンと来る。
大きな木がたくさんある学校がいい。光が差し込む部室が輝いている。先生が少年にチェロを弾いてみせる池も絵になっている。いつも聞こえる風にそよぐ木の葉の音。それらすべてが中学生の日常と呼応し、画面に鼓動を生み出す。
パンフレットには、この映画が浜松の素人の中学生を集めて1年間練習しながら作り上げたことが書かれていた。ドキュメンタリーのようなリアルさはそこからきたものかと感心した。お金をかけなくてもこれほど強い映画が作れるとは。唯一、時おり出てくるぬいぐるみを着たウサギはいらなかったかもしれないが、これが中沢けいの原作の鍵だったのかもしれない。
実は映画を見ながら、40年以上前に小学校の吹奏楽部で自分がトロンボーンを弾いていたことを思い出した。20人ほどの楽団で、トロンボーンは2名。手が長いという理由で選ばれた。私の演奏は無茶苦茶だったが、まともにトランペットを弾いていた友人もいて中学校でも吹奏楽部に入ったが、私は剣道部に行った。
今でもドレミファを「64214243」というスライドの位置で音を出したのを覚えている。数字はまちがっているかもしれない。急に楽器がやりたくなった。
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