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2014年1月15日 (水)

『フルートベール駅で』に学ぶこと

『ゼロ・グラビティ』『あなたを抱きしめる日まで』に続いて、また90分前後の秀作を見た。3月21日公開の『フルートベル駅で』は、27歳のライアン・クーグラー監督の初長編で、85分。

冒頭、「事実に基づく映画」と出た後に、携帯電話で撮られた駅のホームの映像が流れる。警官と黒人青年たちの小競り合いに続いて銃声。映画はそれから、撃たれた青年の前日(大晦日)の様子を描き出す。

スペイン系の恋人との間には娘もいるが、勤めていたスーパーでは遅刻を理由に解雇されたばかり。母親や祖母を大事にして友人も多く、偶然出会った女性にも優しい。

映画は、どこにでもいるような「無職だがいい奴」の日常を、淡々としかし加工されていない「なま」の感じで映し出す。もちろん見ている観客は、それが冒頭の銃声に繋がっていくのだと予感しながら。

ある意味で1点突破のシンプルな作品だ。観客は「人生最後の日」が生み出すサスペンスの中で、いまだにアメリカに存在する人種差別に怒り、残された家族のことを考えるわけだから。終わりに、実際の関係者のその後の説明と映像が流れるのもお定まり。その意味でうますぎるというか、あざとさも感じる。

それでもサンダンスを始めとして多くの映画祭で賞を取っているのは、この青年の描き方がドキュメンタリーのようにリアルで本物だからだろう。絶えず携帯電話の会話やメールのやり取りが画面に映る様子など、何ともうまい。さらに、こうした人種差別による事件が世界中で後を絶たないことへの怒りが、普遍性を持つのだろう。

監督や脚本家、プロデューサー志望の学生には是非見て欲しい。若い監督が世の中に出るには、こうした「テクニック」と「社会性」が必要なのだとわかるから。

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