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2014年1月31日 (金)

唯美主義に驚く

三菱一号館美術館で5月6日まで開催中の「ザ・ビューティフル」展を見た。最初この題名を見た時、何ごとかと思った。よく見ると副題に「英国の唯美主義1860-1900」と書いてあるが、チラシのオレンジの布をまとう女性たちの姿は、いわゆる「お耽美」だ。

この時代は、フランスでは印象派が勃興し、絵画が次第に解体してゆく。その時期英国では何が起こっていたのかを見せるのがこの展覧会だろう。

印象派が目に写るままを描くことを求めて戸外に出たのと違って、唯美主義は「芸術のための芸術」を掲げて、人の目を悦ばせるためだけの絵を目指す。当然それは女性のエロチックな表現に向かう。あるいは生活を美しく彩るデザインへと発展する。

美女をエロチックに描くと言えば、その前の時代の「ラファエロ前派」がそうだが、アルバート・ムーアの絵などはそれをさらに突き進めて、花に埋もれてギリシャ風の衣装を着る女性を描く。もう「お耽美」そのもの。

女性だけではない。いくつか飾られている写真には、男性建築家が古代風の衣装を身につけて、花を手に取って息を吹きかけているものも。お耽美を超えて、自己陶酔というか、ナルシシズムの世界だ。

そうしてそれは、コテコテにデザインを施した椅子や調度品、宝飾、食器に至る。そのうえ万国博覧会を通じたジャポニスムの影響も加わっている。

そしてオスカー・ワイルドやビアズリーの本の唯美主義に至る。いやはや、金持ちエリートのやりたい放題な感じ。展覧会の終わりにチラシの表紙になっているアルバート・ムーアの《真夏》の実物を見たら、頭がくらくらした。

デレク・ジャーマンとか、ケン・ラッセル、ピーター・グリーナウェイなどのイギリスの映画監督の「お耽美」映像は、ここから来ているのかと納得した。

展示品はヴィクトリア&アルバート博物館所蔵が中心だが、テイトやロイヤル・アカデミーのものも加わって、よくまとまっている。19世紀末に原型ができた三菱一号館美術館にぴったりの内容だ。

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