« 『秋刀魚の味』の残酷さ | トップページ | 『ぼくたちの家族』のシリアスさ »

2014年2月17日 (月)

『オンリー・ゴッド』の文化的偏見を楽しむ

公開中のニコラス・ウィンディング・ラフィン監督『オンリー・ゴッド』を見た。この監督は同じくライアン・ゴズリング主演の『ドライブ』が映画ファンをくすぐるショットに満ちていたので、見たいと思っていた。今度はそれをさらに進めた感じだった。

ゴズリング演じるジュリアンは、兄のビリーとタイでボクシングクラブを経営している。その兄がタイの若い娘を殺してしまい、その父親が復讐に現れる。それからその父親と兄弟の戦いになるかと思ったら、兄弟の母(クルスティン・スコット・トーマス!)がアメリカから現れ、謎の警官チャンと対決する。

冒頭から画面は真っ赤だったり、青い光に照らされているしで、よく人の顔も見えない。部屋の廊下や通りの意味ありげな無人のショットを始めとして、やたらにロングショットが多いし。そこで次々と人が殺されてゆく。殺す理由は一応あるが、誰の心のなかも見えない。

最近のアメリカ映画とは違い、殺す場面はスタイリッシュで短いので見ていられるが、それでも残酷だ。とりわけ無言で一発で殺すチャンなんて、日本のヤクザ映画みたいだ。そのうえ、彼は殺した後で必ずカラオケ屋で歌う。

鈴木清順じゃあるまいしと思った。あるいはデヴィッド・リンチとか、クエンティン・タランティーノとか、いわゆるジャンル映画をとことん追求して、形だけが残ってしまった監督たちの作品を思う。

ふとこれを見たタイの人々は、「国辱映画」と思うだろうなと思った。女はみんな娼婦で、刑事はみんなヤクザまがいだし、ボスは残酷の極致を見せる。でも映画はそんな文化的偏見があってこそおもしろいのは、『チート』(1915)の早川雪洲の昔から変わらない。

息子の復讐に現れるクリスティン・スコット・トーマスが凄みを見せる。あまりに貫録があって、最初にホテルに現れた時は、彼女だとわからなかった。警官チャンを演じるヴィタヤ・パンスリガムが、絶対に負けない神がかった感じで最高だ。彼は『ハング・オーバー‼』などにも出ているらしいが。

わかりにくいし残酷なので一般向けではないが、映画を年に100本以上見る人にはオススメだと思う。

|

« 『秋刀魚の味』の残酷さ | トップページ | 『ぼくたちの家族』のシリアスさ »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/59150148

この記事へのトラックバック一覧です: 『オンリー・ゴッド』の文化的偏見を楽しむ:

« 『秋刀魚の味』の残酷さ | トップページ | 『ぼくたちの家族』のシリアスさ »