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2014年2月10日 (月)

『ニシノユキヒコの恋と冒険』のユーモアと実験精神

井口奈美監督の新作『ニシノユキヒコの恋と冒険』を見た。試写状をいただいていたが、見る予定の日にインフルエンザにかかってしまった。今回は何と東宝配給でシネコンでの公開というので、すぐ切られると思って慌てて見に行った。

さすが、最近仏誌『カイエ・デュ・シネマ』が「期待される世界で10人の女性監督」に選んだだけのことはある。ユーモアと実験精神溢れる楽しい作品だった。

竹之内豊演じるニシノユキヒコは、とにかく会う女性ごとにもてる。ハンサムで優しくて、相手の望むことを察して動く。彼のことを好きになるのは、会社の先輩の尾野真千子に、マンションの隣りの部屋に住む成海璃子と木村文乃、元恋人の本田翼、10年前の恋人麻生久美子に料理教室で出会う阿川佐和子。

最初に麻生とその娘とカフェで会う竹之内が写り、それから時代は飛んでユキヒコの葬式の日になる。そこに集まって来る女たちを前に、阿川は麻生の娘にユキヒコの魅力を語り、彼のモテぶりが蘇る。

正直なところ、ここに来るまではちょっときつかった。ファンタジーにしては、映像や音がリアルすぎる。彼の過去が映像として見せられると、女たちの興奮や鼓動が伝わってくるようで楽しい。職場で尾野が一喜一憂する様子や、成海がユキヒコと仲良くなるとがぜん活躍する猫など、覗き見でもしているようでドキドキする。

阿川自身がもっと活躍していればおもしろかったのに、と思う。というよりも、彼女が語るという設定に無理があったのではないか。後半の生き生きした画面に比べて、前半の入り組んだ構造がちょっと作りものに見えた。

そのせいか、前回の『人のセックスを笑うな』に比べて、リアリティが薄い。映画的表現を求めすぎた頭でっかちな感じか。その意味で、青山真治の『東京公園』を思い出した。

それでも、今年の日本映画の大きな収穫。撮影と効果・整音を兼ねた鈴木昭彦とのいつものコンビで、驚異的な音の空間を作り出している。青山の『東京公園』がそうだったように、フランスでは確実に評価されると思うので、是非海外に出して欲しい。

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