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2014年2月 1日 (土)

アンゲロプロスの遺作を見る

テオ・アンゲロプロスの遺作『エレニの帰郷』をようやく見た。2008年の映画だし、上映前にはフランス映画社ではなく東映のマークが出るし、見たのもシネコンという奇妙な感じから始まった。

映画が始まっても違和感は続く。チネチッタが写り、英語のモノローグが聞こえるからだ。それはウィレム・デフォーだとわかる。それから1953年の列車内の映像とチネチッタの中が交互に写る。そして真っ白な雪原の中に列車が一台止まっていて、イレーヌ・ジャコブ演じるエレニがそれに乗り込むあたりから、ようやくアンゲロプロスだと思う。

思えば、大学生の時一番入れ込んだ監督はタルコフスキーとアンゲロプロスだった。たまたま2年生の時に『ストーカー』と『アレクサンダー大王』(80)が、福岡の中州シネサロンという80席の映画館で立て続けに公開されたからだ。それからは、彼らの作品が公開されると必ず見に行った。あるいは『旅芸人の記録』(75)や『狩人』(77)のようなそれ以前の作品も見た。

『こうのとり、たちずさんで』(91)でマルチェロ・マストロヤンニとジャンヌ・モローが出たあたりから、違和感を感じた。途中まではいいのだが、いつも物語が消化不良で終わる。それでも毎回抜群に美しい映像を見せてくれた。

今回もそれは変わらない。1956年、シベリアの刑務所で巨大な階段を登る囚人たち。そこにかぶさるエレニの手紙を読む声。あるいは刑務所の文化館で、パイプオルガンを弾くヤコブ(ブルーノ・ガンツ)のドイツ語。1999年のベルリンの空港の税関で、スキャナーで裸体が写るシーン。

こうやって書いているときりがない。エレニが夫(ミシェル・ピコリ)とベルリンのホテルに着き、そこにヤコブが現れてからが特にいい。3人が街の中を歩き、ヤコブとエレニがジプシーの音楽で踊りだす。

それらに比べると、ウィレム・デフォー演じる監督の部分がたぶん弱いかもしれない。それにしても、20世紀後半のいくつもの時間と場所を自由に行き来しながら、亡命者たちの生き方を追いかけてゆく強烈な映像の連続に何度も唸った。もう一度見たら、もっとよくなる気がする。

名優4人が揃う映像を見ながら、彼らが出たほかの映画も頭をよぎった。とりわけ、ブルーノ・ガンツの『ベルリン天使の詩』やイレーヌ・ジャコブの『ふたりのベロニカ』のことを考えた。

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