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2014年2月26日 (水)

『チョコレートドーナツ』のうまさ

また90分台の秀作を見た。4月公開のトラヴィス・ファイン監督の『チョコレートドーナツ』は97分。トライベッカなど各地の映画祭で観客賞を総なめにしている映画だが、観客賞が苦手な私もそのうまさに唸った。

1979年のカリフォルニア。ゲイのカップルが偶然出会うダウン症の男の子を育てようとして出会う困難を描く。出だしからうまい。真面目そうな青年ポールがゲイ向けのキャバレーに行き、そこで口パクで歌うルディと出会う。その一目惚れの描き方が、何ともシンプル。

ポールは弁護士だが、最初はゲイであることを隠そうとする。ルディは思ったままに話し、行動する性格で、本物の歌手を夢見る。ルディの隣人の女性が麻薬中毒で逮捕され、彼は残されたダウン症のマルコを引き取ろうとするが、家庭局に連れていかれる。

それから、マルコと暮らそうとするルディとポールの法廷劇が始まる。ポールはその過程で勤めていた検事局を解雇され、次第にゲイであることを隠さなくなる。

ルディを演じるアラン・カミングの自由に生きる感じがいい。彼がボブ・ディランなどを歌うと、まるで自分の人生を歌っているように見える。3人が楽しそうに暮らす様子を撮った8ミリが流され、彼の歌が聞こえてくると涙が出てきた。

ラストもきちんと映画らしい結末がある。裁判劇のサスペンスに加えてルディの歌手としてのデビューなどいくつもの要素を組み合わせながらも、コンパクトにまとまっている。

おそらくデジタル撮影だろうが、裁判所の中や家の中、そしてマルコが彷徨する夜の街などの映像が、古めかしくてフィルムのように見えた。髪型や服装、音楽など70年代のレトロな要素が満載のせいか。あるいは昔の映画のようなコンパクトな構成のせいか。

いずれにしても、俳優出身というトラヴィス・ファイン監督は、脚本も演出も実に巧みで次回作が楽しみ。現代において90分台の映画を作るというのは、それだけで才能の証明かもしれない。

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