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2014年3月17日 (月)

『それでも夜は明ける』のリアリズム

『それでも夜は明ける』を見た。昨秋にトロントに行った時、観客賞を取った作品だが見ていなかった。"12 Years a Slave"という原題なので、頭の中でこの半年ほど「12年間、奴隷」という題が染みついてしまった。結局試写で見る余裕がなく、ようやく劇場で見た。

一言で言うと、ずっしりと見ごたえがあった。奴隷制度を見せる映画はいくらでもあるが、これほど隠さず見せたのは初めてではないか。例えば、奴隷たちが売られる前に、庭のような場所で男女一緒に全裸になって体を洗う。それから市場でも全裸の彼らを白人たちが品定めする。

舞台は、1840年代の南北戦争前のアメリカ。北部で自由黒人だった主人公が、突然拉致されて奴隷制度が認められていた南部に売り飛ばされる。そこから何とか抜け出そうとするが、あらゆる希望はくじかれる。冒頭と終わりを除く映画の8割が、つらい奴隷生活の描写だ。

鞭打ちや首吊りなどの残酷なシーンが続く。それを時おり長回しで見せたり、太陽や大地の華麗な色をバックにしたり、シーンをまたいで音楽を流したりと、実は技術的に相当凝っている。

監督のスティーブ・マックイーンは、あの俳優と同じ名前だが、英国出身の黒人でもともと現代美術作家として有名だった。ベネチア・ビエンナーレの英国代表で、たしか国別の金獅子賞を取ったはずだ。その頃から計算されつくされた映像が光っていた。

今回の徹底したリアリズムも、実は敢えてこのような残酷な映像を今見せることの意義とそのテクニックをすべて計算したうえでの映画に見えた。その分、見た後どこか醒めていた。

それにしても、150年ほど前の米国にこれほどの差別があったとはと思う。第二次世界大戦中の日本やドイツの蛮行も、現代の北朝鮮の独裁政権も、みんな同じことのように見えた。

公開2週目の週末だが、つらい内容のせいか、入りはかなり悪い。アカデミー賞で作品賞などを受賞していなかったら、普通はアート系の公開だろう。


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» 映画:それでも夜は明ける 12 Years a Slave 圧倒的! アカデミー賞「本命」と判断。 [日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜]
まずオープニングで驚く。 基本プロットは予想がつく通り、主人公はNYに住む、自由証明書で認められた自由黒人。 地位、名誉、家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、南部に連れて行かれる。 そして奴隷にされてしまう、 のだ...... [続きを読む]

受信: 2014年3月21日 (金) 01時52分

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