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2014年3月20日 (木)

またルーマニア映画の秀作が

ルーマニア映画がおもしろいと言われてもう何年にもなる。6月公開のカリン・ペーター・ネッツアー監督の『私の、息子』もその1本で、去年のベルリンで金熊賞を受賞している。

地味だが、何とも重い作品だった。金持ちの中年女性が主人公で、彼女の息子が交通事故で少年を殺してしまい、その後始末に走り回るという話だ。

カメラは、ドキュメンタリーのように手持ちの長回しで中年女性を追う。ブロンドで毛皮や宝石を身にまとい、BMWに乗る。自分の誕生日には政治家や実力者の知り合いが集まるような、パリやロンドンにいてもおかしくないような女性だ。彼女は息子を溺愛し、あらゆる手段を使って、息子の罪を免れさせようとする。

主人公が室内で話すシーンが秀逸だ。とりわけ息子の恋人との話や、被害者の両親に会いに行った時の会話が強く印象に残った。カメラは話す人を追うだけなのに、まるでカメラに突き動かされるように人々は話し出す。話はどちらに転ぶのか予測できず、思わぬ展開となる。

息子はそんな母親が嫌いで、ろくに会話さえしようとしない。被害者の家に行っても、車の中から出ようとしない。遮二無二突っ走る母親の勢いが、ラストにようやく息子を変えようとする。

どこにでもあるような話だし、特に撮影を工夫したようにも思えないのだけれど、見ているうちに忽然と人間の真実が立ち上がってくる。無造作に見えて、実は考えつくされた作品だ。

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