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2014年3月21日 (金)

本当のことを言おうか:塩野七生氏をめぐって

1週間ほど前の朝日新聞に、東北大震災3年目特集で塩野七生氏への1ページのインタビュー記事があった。これを読んで、かつての苦い体験が蘇った。書くべきか迷っていたが、やはり書く。

あの長いインタビューを読んだ読者は、その内容のなさに唖然としたのではないか。朝日の編集委員がわざわざローマまで出かけて「仕事部屋のテーブルをはさんで4時間半、街に出てさらに4時間余」を費やしたのに、この内容の薄さは何だろうか。

「日本よがんばれ」という精神論を除くと、被災地の選挙において45歳未満に1人2票を与えよう、という奇妙奇天烈なアイデアくらいしかない。そのうえ原発再稼働に賛成という。理由は原発はコストが安いという、もはや誰も信じない東電と同じ論理に加えて、「始めたことを途中で止めては、これまでの苦労が水泡に帰する」という、がんこ老人のような考えだから驚く。

この人の話を生きる指針としてありがたがるようになったのは、いつ頃からだろうか。朝日に書いてあるように、「イタリアに40年以上住み、古代から中世の地中海世界と向き合い、壮大な物語をつむいできた」から、現代の日本にいいアドバイスを与えられるのか。

この数年に出たエッセーをWikiからコピペすると、『日本人へ リーダー篇』(2010年 文春新書)『日本人へ 国家と歴史篇』(2010年 文春新書)『生き方の演習 若者たちへ』(2010年 朝日出版社)『想いの軌跡 1975-2012』(2012年 新潮社)『日本人へ 危機からの脱出篇』(2013年 文春新書)。いやはや。

そして毎年12月に帰国しては、新潮社から出る新作のキャンペーンで新聞各紙にインタビューを載せる。もちろん中身は「日本よがんばれ」だけど。私は彼女の歴史物をちゃんと読んだことはない。その壮大な表現に途中で止めてしまう。かつてナポリ大学の日本語の読める教授が「うそばっかり書いている」と言っていた。映画についての唯一の本、『人びとの物語』は読んだが、何も言うことはない。

私の「苦い経験」とは、10年近く前に私がやっていたイタリア映画祭に介入してきたことだ。会社の首脳陣を使って脅し、ある作品を入れなさいと言ってきた。なぜそんなことをしたかあとからわかったが、それはひとえに自分のためだった。彼女の『ローマで語る』を読めば、その理由が少しはわかるかもしれない。

彼女からの電話やファックスの内容も鮮明に覚えているが、これ以上はさすがに書けない。もともとこのブログでは公人以外の個人攻撃はしない。ただ大震災後にさらに「日本よがんばれ」に拍車がかかった彼女や、それを利用するメディアは許せないと思った。

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コメント

塩野氏の本は、4-5冊読みましたが、すきではありません。なんか、英雄崇拝みたいな感じで、読んでて気分が悪くなりました。ストーリーとしてはおもしろい(一応、歴史に則っているからとは思いますが)。十字軍がはやくオスマントルコにつぶされてしまえ~、という感じで読んでいるのだから、好きになれませんよね。「ローマ人の・・・」も、ハンニバルが出てきたあたりでいやになりました。

投稿: jun | 2014年3月21日 (金) 14時12分

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