『ダラス・バイヤーズクラブ』の気持ちよさ
今年のアカデミー賞で主演男優賞と助演男優賞、さらにメイク・ヘアスタイリング賞の3部門を受賞した『ダラス・バイヤーズ・クラブ』を見た。主演のマシュー・マコノヒーがすごいという評判をアチコチで聞いたのも見た理由。
彼は最近『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の前半で、脇役だが実に印象的な証券マンを演じていた。今度は余命わずかのカウボーイだという。
見てみると、確かにこれはマコノヒーの映画だ。冒頭で、ロデオの賭けで小銭を稼ぎ、酒と女とドラッグにつぎ込んで刹那的な人生を送る彼の姿が写る。倒れて病院に運び込まれてエイズで余命1ヶ月と宣言されても、全く気にしない。
この映画がおもしろいのは、このいい加減な男が独学でエイズについて学び、1980年代後半の米国の医薬品制度に逆らってゆくところだ。真面目になったのかと思いきや、彼の目的は金を稼ぐことで、外国から仕入れた未認可の治療薬を、会員制で希望者に頒布する。これが「ダラス・バイヤーズクラブ」となる。
かつては刹那的な生き方をしていた男が、金儲けをしながらも製薬会社や腐敗した医者、FDA(食品医薬局)を相手に戦い、裁判までするのだから、見ていて快哉を叫びたくなる。それに加えて彼を助けるメキシコに住む医者や、地元の女医で彼に同調するイヴといった脇役がいい。
さらに彼がビジネスパートナーとして選ぶゲイのレイヨン(ジャレッド・レト)の存在感が圧倒的だ。こんな役ができる俳優だとは思わなかった。
マコノヒーが薬を求めて日本に来るシーンがある。インターフェロンを販売していた岡山の林原に行くのだが、ここはアメリカで撮影したせいか、かなりいい加減でおかしかった。
マコノヒーに密着したドキュメンタリーのような作りが、映画のテーマにぴったり。監督はジャン=マルク・ヴァレ。フランス風の名前だと思ったら、カナダの監督らしい。最近はカナダの監督の活躍が目立つ。
この映画を見ながら、90年代にエイズで死んだフランスの友人2人のことを考えていた。今ならもう助かる薬はあるのだろうか。
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