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2014年3月11日 (火)

『バチカンで逢いましょう』の幸福感

4月26日公開のトミー・ヴィガント監督『バチカンで逢いましょう』を見た。この監督は『飛ぶ教室』が日本でもヒットしているが、実はかつてドイツ映画祭をやっていた頃、2007年に子供向け映画『TKKGと謎のマインド・マシーン』(06)を上映して、監督も来日したことがあった。

彼は、わざわざドイツから子供向けのお土産をたくさん持ってきて上映後に配っていた。その親切な様子を思い出して、新作を見たいと思った。そのうえに、主演は『バグダッド・カフェ』(87)のマリアンネ・ゼーゲブレヒトだし、彼女がローマで出会う相手は何とイタリアの名優ジャンカルロ・ジャンニーニ。

物語は、夫を亡くしたカナダに住むドイツ人女性が、ローマ法王に一目会おうと、ローマに行ってふとしたことから料理人として活躍するというもの。この女性オマを演じるのがマリアンネ・ゼーゲブレヒトだが、『バグダット・カフェ』から既に25年たっているのにもかかわらず、何とあまり変わっていない。

ジャンカルロ・ジャンニーニは詐欺師として現れるが、キザな格好でヴェスパに乗る。妻がドイツ人で、息子が後を継いでドイツ料理店をやっているが客は来ない。そこに偶然に食べに来たオマが、あまりのまずさに自分でウィンナー・シュニッツェルを作ると、客が集まりだす。

本当はここの部分をもっときっちり見せてくれたら楽しかったのだが、映画はオマの娘とその夫、ローマに住む孫、そしてその恋人などを丁寧に見せていくので、盛り上がりには欠ける。子供向けの映画を作っていた監督らしく、演出がまるで振り仮名をふったようにわかりやすく、随所にコミカルなシーンが入れられている。

それでも見ていて幸福感が溢れるのは、太って歩くのもつらそうなマリアンネ・ゼーゲブレヒトが、何とも楽しそうにローマを歩き回るからだ。例えば屋上のテラスで迎える日の出のシーンなど、その嬉しさが伝わってくる。彼女は「こんなに幸せな毎日は生まれて初めて」という。

大半の日本人にとってはイタリアもフランスもイギリスもそれぞれに魅力があるが、欧米人にとってイタリアは特別だ。それはたぶん18世紀に「グランドツアー」と呼ばれた、欧州貴族のイタリア旅行あたりから来ているのだろう。

だから欧米人がイタリアに行って幸せになる映画は、『ローマの休日』を始めとして無数にある。『バチカンで逢いましょう』は、それらに連なるイタリア賛歌の映画だ。オマが出会うイタリア人が、なぜか全員ドイツ語ができるといったご都合主義も含めて。

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コメント

通りすがりに失礼します。ツイッターから参りました。
先日この映画を見たばかりで、私の感じたことを的確に言葉にしていただいた感じでとても幸せな気分になりました。ゼーゲブレヒトって不思議な女優ですね。
ひとつだけ気になったのですけど、料理人さんはロレンツォの甥だと字幕には書いてあったと思うのですが、実は違ったりしたのでしょうか?事情が事情とはいえ、カトリックの女性が既婚男性と偽装でも結婚するというのはまずいだろうけれど、妻ではなくきょうだいならと納得してたのですが。

投稿: akkie | 2014年9月21日 (日) 10時40分

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オマ ロック 公式サイト http://www.cinematravellers.com4月26日公開 監督: トミー・ヴィガント  「飛ぶ教室」 ドイツのバイエルン出身でカナダの大自然の中で生活して [続きを読む]

受信: 2014年4月 8日 (火) 12時53分

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