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2014年3月13日 (木)

『レイルウェイ』に見る戦争の怨み

最近、中国や韓国からの日本批判が強まっているが、その一番奥にはあるのは、第二次世界大戦中の日本軍の蛮行だ。今頃になってとは思うが、その怨みが個人的な体験に基づく場合はこんなに強いのかと考えさせられる映画を見た。

4月19日公開の『レイルウェイ 運命の旅路』がそうだが、コリン・ファースとニコール・キッドマンに真田広之というキャストを聞いて、もっと派手なものを期待していた。ところがこの映画は、実際にシンガポールで捕虜になった英国将校の自伝をもとに、彼の個人的な恨みを追う。

冒頭は1980年代、英国の退役軍人が集まるサロン。エリック(コリン・ファース)は鉄道オタクの変人として知られている。彼は列車でパトリシア(ニコール・キッドマン)と出会い、幸せな結婚をするが、ある時戦友から第二次大戦中に捕虜だった自分を虐待した元憲兵隊の永瀬が生きていることを知らされる。

そして彼は、復讐のために永瀬(真田広之)をタイに訪ねてゆく。この現代の物語を中心に、かつての捕虜時代の日々が繰り返し挿入される。

イギリスとオーストラリアの合作で日本は製作に係わっていないため、いささか一方的な見方かもしれない。日本人としては見ていてつらいが、捕虜から見たらたぶんこのように見えただろうなという、残酷な日本兵の姿が克明に描かれている。

エリックに日本軍への復讐をさせようとするステラン・スカルスガルド演じる戦友の執念も含めて、個人的な恨みというのは戦争責任などといった抽象的なものを超えて、生涯消えないものだと思った。

ジョナサン・テプリツキーの演出はいささか大味で、最初から音楽に尺八の音色が入ったりして興醒めだ。それでも、これがイギリスが日本を描く時の普通のやり方なのだろう。泰緬鉄道の過酷な建設場面など実にリアルに再現しているし、英国兵が秘密裏にラジオを作ろうとする過程も楽しい。そして現在のその地域のひなびた風景もいい。

タイで戦争体験を伝える博物館を作ってそのガイドとして暮らす永瀬が、エリックに会った時に「和解」reconciliationという言葉を発する。その時は浮いた言葉だと思ったが、これがラストでエリックの口から出てくるとずっしりと来る。和解とは、結局こうした個々の心の問題なのだろう。

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