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2014年4月 2日 (水)

『夢は牛のお医者さん』の26年間の映像

毎日のように映画を見ていると、さすがに「素直に感動」というのは少なくなる。そんな私が何もかも忘れて感動してしまったのが、ドキュメンタリー映画『夢は牛のお医者さん』。

一昨日、『白ゆき姫殺人事件』についてここで書いた。その時、「読売」の評を読んでいたら真下に福永聖二記者のこの映画についての文章があった。「一人の少女に密着26年」という見出しで、読んでいたらすぐに見たくなった。

これが、本当にある女性を26年間追いかけた映像だった。製作はテレビ新潟で、最初はおそらく「素朴な田舎ネタ」くらいの感じで、新入生がいない代わりに牛を迎えた山間の小学校を取材したのだろう。その時小学校3年生だった知美さん達は、半年後育った牛が去ってゆく時に「牛の卒業式」をして泣く。これが1987年。

それから数年ごとに彼女の映像が流れる。91年には小学校を卒業し、文集に「獣医になりたい」と書く。97年には岩手大学の獣医学部に合格。その電報を読む彼女を思い出すだけで、今でも泣けてくる。99年に成人式、2003年に卒業し、国家試験合格。

そして新潟に帰ってきて、上越市家畜診療所に獣医として働き始まる。08年には結婚して今や2児の母。家畜農家から連絡があると駆けつけて、牛の肛門にビニールを付けた左手を突っ込み、「妊娠3カ月ですね」と自信を持って診断する。そして「家畜は経済動物ですから、売られる値段以上の治療はできない」とさらりと言う。

「夢をかなえる」とは、言うのは簡単だが、こんなにストレートに見せられると、現代日本でもまだこんな教育が可能なのかと驚いてしまう。もちろんこれには立派な小学校の先生や両親がいてのことだが、それにしても。

別に映像の1つ1つは、どうということはない。音楽も過剰だし、ナレーションも説明過ぎだと思う。けれどそんな美学を超えて、この映像は力強く語りかけてきて、誰でも感動させてしまう。26年という時の流れを映像にするなんて、地方テレビ局にしかできない力業だろう。

考えてみたら、この映画を上映中の「ポレポレ東中野」は、昨年来『ある精肉店の話』や『立候補』など衝撃的なドキュメンタリーを見た場所だ。今後もっと通いたい。

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