あと2回は見たい『グランド・ブダペスト・ホテル』
いやあ、おもしろかった。6月公開のウェス・アンダーソン監督『グランド・ブダペスト・ホテル』。話は入り組んでいるが、中央ヨーロッパの大ホテルを舞台に、名だたる個性派俳優たちが紙芝居のように現れては消える。豪華で洒脱な映像に溜息が出るほど。
まず現代から1985年へ。そしてそこで作家は1968年のグランド・ブダペスト・ホテルでの話を始める。そこに出てくる謎のオーナーは、1932年の話を始める(少し間違っているかもしれない)。
キッチュでバロックな中央ヨーロッパらしいホテルを舞台に、まるでマトリューシュカ人形のように話の中からどんどん話が出てくる。そのたびに時代に合わせて、スクリーン・サイズまでビスタからシネスコ、スタンダードへと変わる。
たどり着いた1932年では、まるでルビッチの映画のようなとびきりエレガントな犯罪喜劇が展開する。ホテルのコンシエルジュ、グスタフはあらゆる顧客の要望に応えて人気を博する。ある時一番の顧客であるマダムD(ティルダ・スウィントン)が殺されたと聞いて、彼は若いベルボーイのゼロを連れて、彼女の屋敷に駆けつける。
そこには強欲の息子(エイドリアン・ブロディ)がいて、なぜかグスタフに協力的な謎のフランス人執事(マチュー・アマルリック)や、息子の手下の私立探偵(ウィレム・デフォー)らとのゴタゴタに巻き込まれる。名画を盗んで逃げるが、軍警察の大尉(エドワード・ノートン)に捕まり、そこを脱獄してさてどうなるか、というドタバタのサスペンス。どんな場面でも落ち着いて魅力的なグスタフのように、映画自体も上品なファンタジー調。赤や紫、ピンクを駆使した色彩感覚もキッチュでピッタリ。
84歳の老女を演じてすぐに死んでしまうティルダ・スウィントンを始めとして、スターたちが使い捨てのように出てくる。今週末に始まる『アデル、ブルーは熱い色』主演のレア・セドゥーに至っては、ほんのチョイ役。そのほか、ジュード・ロウ、ハーヴェイ・カイテル、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、トム・ウィルキンソン等々、普通の映画の10本分くらいの主役級が続々と登場。
あまりにテンポが速くて物語を追うのに精一杯で、俳優たちは名前を考えているうちにいなくなってしまう。久しぶりに、豪華でノスタルジックでユーモアたっぷりの手品のような映画を見た。ウェス・アンダーソン監督は、『ムーンライズ・キンギダム』も良かったが、今回はケレンミたっぷりでもっといい。あと2回は見たい。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は不思議なSF(2026.04.08)
- 初期アサイヤスに震える:続き『無秩序』(2026.04.12)
- 『自然は君に何を語るのか』の自然とは(2026.04.04)
- 『金子文子』の迫力(2026.03.31)


コメント