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2014年4月 1日 (火)

「大江戸視覚革命」が展覧会に

江戸時代の絵画と言えば、狩野派とか琳派とかを考えるが、今回見た展覧会は全く別物だった。サントリー美術館で5月11日まで開催の「のぞいてびっくり江戸絵画」展のことだ。副題の「科学の眼、視覚の不思議」の通り、当時の最新科学に影響を受けた絵画が並んでいる。

まずは西洋絵画に影響を受けた遠近法がある。広重の浮世絵など、近くを極端に大きく描くが、遠方も細部まで書いていて、明らかに西洋絵画の先まで行っている。あるいは俯瞰で鳥の視点で描いた街の数々。望遠鏡なしでは考えられないし、実際に当時の望遠鏡も展示されている。

さらには顕微鏡を使ったミクロの絵画。蚤や蚊、雪の結晶まで描かれている。そしてそこから生まれた博物誌的情熱。昆虫や動物や魚類をびっしりと描く。当時の木製で和風の顕微鏡が、何とも風情がある。

それから、影絵や鞘絵など、光と影の戯れをテーマにした絵画が並ぶ。障子を使った影絵に浮かぶ人々の姿も、「寄せ絵」と言われる、遠くから見るのと近くに寄るのと違って見える国芳の絵も何とも楽しい。鞘絵は歪んだ絵を円筒の鏡に映すもので、これは明らかに西洋のアナモルフォーシス。ここまで来ると映画にぐっと近づく。

江戸後期、18世紀から19世紀にかけて、さまざまな光学機械を使って視覚的な実験をしながら絵を描いていたことが、手に取るようにわかる。映画については、トーキーとかカラーとか科学技術によって表現が変ってきたことはいつも考えるが、絵画についてはそれを忘れがちだ。しかし望遠鏡や顕微鏡などが、江戸絵画の描き方、描く対象をどんどん変えてきたことがこの展覧会を見るとよくわかる。

江戸時代は鎖国と言うが、最新の機器も本も絵画も何でも輸入されているではないか。最近、成田龍一著『近現代日本史と歴史学』という新書を読んでいたら、「鎖国」という言葉はペリー来航以降に広まったものだと書かれていた。長崎以外にも、対馬、薩摩(琉球)、松前(蝦夷)の窓口が開かれていて、とても鎖国とは言えないというのが、最近の歴史学らしい。

『大江戸視覚革命』というしばらく前に話題になった本もあったが、まさにその通り。映画が生まれる前の、新たな視覚的効果への日本人の情熱がよくわかる。江戸時代の豊かさを再認識すると同時に、映画史を考える上でも大きな刺激となる。

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