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2014年4月17日 (木)

「医は仁術」展に見る江戸時代の知的好奇心

英語のmuseumは、美術館も博物館も指す。ニューヨークのメトロポリタン美術館にはピカソもあるが、恐竜もある。日本で美術館と博物館をはっきり区別しているのはおかしい。国立科学博物館で6月15日まで開催中の「医は仁術」展を見ながらそんなことを考えた。

普通、博物館に恐竜はあっても、医学系の展示はない。ところがこの展覧会に並んでいる江戸時代の人体解剖図の数々は、色とりどりに美しく描かれている。屏風の形になっているものが多いが、これは医学用でありながら、おもしろい見世物的な飾りものなのではなかったかと思う。

「生き人形」というのは江戸時代から明治にかけて見世物として流行った人物大の人形だが、この展覧会には人間の内臓を開いて見せた生き人形まであった。あるいは解体人形として、人体を開けると内臓が出てくる子供向けのおもちゃまである。これは男女のパーツが交換可能!

この展覧会は、江戸時代から明治初期までの医学の発達を資料で探るものだが、まず本や屏風や手術道具などの膨大な数に驚く。中国から漢方を学んで独自に進化させ、18世紀半ばにはオランダの本を参考に人体解剖までやるのだから。

先日サントリー美術館で「のぞいてびっくり江戸絵画」を見て西洋の科学技術を取り入れた絵画に驚いたが、ここでは江戸時代の西洋医学への貪欲な好奇心がよくわかる。オランダ語の本を読むために独学でオランダ語を学んで辞書を作り、翻訳をしてそれをもとに人体解剖をしてしまうのだから。

今回は、18世紀半ばに最初の人体解剖をした山脇東洋の解剖図「九臓全面図」が初公開として展示されている。頭部がないのは斬首刑の囚人を解剖したからという。肺が青色に、心臓は赤色に、肝臓が茶色に塗られていてわかりやすい。

もちろん1774年に出た『解体新書』関連の資料も多数出品されている。人体を解剖してみたらオランダの書籍の図と同じだったというのに驚き、われもわれもと死刑囚を解剖した様子がよくわかる。人間の知的好奇心とは恐ろしい。

18世紀半ばだから、明治維新まで百年はある。江戸時代が鎖国だったとは、やはり後から考えたフィクションでしかない。ところでこの展覧会は最後のコーナーで明治から一挙に現代になり、3Dプロジェクションマッピングで体の仕組みを説明する映像などが並ぶ。ここには美的センスも知的好奇心も感じられず、私には興醒めだった。

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