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2014年5月30日 (金)

ためになる『マンデラ―自由への長い道』

『マンデラ―自由への長い道』を劇場で見た。8月30日公開の『ケープタウン』を見たら、2年前に行ったケープタウンの街並みやその沖にあるマンデラが収容されたロベン島のことが思い出されたから。あの青みがかった鉄格子の中のマンデラの姿を見たくなった。

多くの日本人と同じく、私はマンデラのことも南アフリカのこともよく知らない。長年アパルトヘイト政策を取ってきたこと、その結果マンデラが何十年も牢獄に入れられていたが、90年代に出獄して大統領になったことくらい。

その意味で、この映画はためになった。マンデラが1940年代から黒人の権利を守る弁護士として注目されたこと、アパルトヘイト政策は1948年にできて、どんどん厳しくなっていったこと、マンデラは同志と共に非暴力運動を続けていたがやむにやまれず武力闘争に向かうこと。そして1980年代からは1人で白人政府と和解への道を探ったこと、大統領選の直前まで黒人同士の内戦が激しかったこと。

私生活では政治活動で家庭を顧みず、最初の妻と別れたこと、2番目の妻とも出獄後別れたこと。妻からの手紙は半年に1度しか許されないうえ、ずたずたに検閲されていること、1人目の妻との子供の事故死を電報で知ること、娘とは16歳になるまで面会も許されなかったこと等々。

27年間の投獄生活を真ん中に、1994年の大統領就任までの50年間余りにこれらの公私にわたる要素を詰め込み、迫力ある映像で見せることに成功しているのは事実だ。

しかしながら映画として見ると、なぜか作り物に見える。史実に忠実であり、マンデラを演じるイドリス・エルバの顔が次第に本物に似てくればくるほど、見ていてどこか冷めた気分になった。

もちろん派手すぎる音楽に閉口したこともあるが、それ以上に映画とは事実を並べればばいいものではないということだろう。イーストウッド監督の『インビクタス』には、マンデラが大統領に就任したわずか1年だけの話でも、映画的感動が詰まっていた。

あるいはマンデラの獄中生活の苦しさには、6月28日公開の中国のドキュメンタリー『収容病棟』のような生々しさが決定的に欠けていて、どこか美化されている気さえした。

そんなわけで不満は多いが、この映画を見てよかった。多くの史実とともに、マンデラの寛大でありながら妥協をしない生き方を知った。

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