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2014年5月10日 (土)

『複製された男』に考える

7月18日公開のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『複製された男』を見た。このカナダの監督は、追い立てられるような物語の演出がうまい。『灼熱の魂』(10)は、亡くなった母の軌跡をたどる子供たちを描き、現在公開中の『プリズナーズ』では消えた6歳の娘の跡を追う父親を見せた。

2本とも最近の韓国映画を思わせるような過剰な演出が気にはなるが、最後まで一気に見せる。その彼が今度は現代ミステリー小説に挑んだのが『複製された男』。

今度はこれまでのように社会派的な内容ではなく、シンプルで抽象的とも言えるような物語だ。大学で歴史を教えるアダムがある時、同僚の勧めでビデオを見る。そこに映っていた脇役のベル・ボーイが自分そっくり。気になって名前を調べ、ほかの作品も見る。

そのうち所属事務所を調べ、そこからその俳優の自宅を割り出して向かう。そこには妊娠中の妻がいた。そしてとうとうその俳優と会うことになる。

登場人物は主人公とその恋人、それにそっくりの俳優とその妻のほぼ4人。主人公と俳優を演じるジェイク・ギレンホールが、うり二つながらもどこか印象の違う2人を演じ分ける。恋人役のメラニー・ロランと俳優の妻を演じるサラ・ガドンも、ブロンドのスタイルのいい美人でどこか似ている。

見ていて誰が誰だかわからなくなるような迷宮を、例によって畳みかけるような演出で見せてゆく。最後のショットで「ああ、そういうことか」と、冒頭のシュールな数ショットを思い出すことになる。

これまでの2本では2時間を越す長尺だったのに、今回は90分でピシリと終わる。このシンプルな構成だと、これ以上はだれてしまうだろう。そのあたりも含めてうまい。エンド・クレジットに出てくるのトロントの高層ビルの移動撮影を見ながら、いい気分になる。

それにしても、自分とそっくりの人間がどこかにいるという話は、妙に引っかかる。見かけたらそのままついていってしまいそうだ。この映画はポルトガルのノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの同名小説の映画化らしいが、原作を読んでみたくなった。

どうでもいいが、試写会で斜め前に座った女性がラストシーンで「えっ、なんで」と声を出した。映画館での観客の反応はこんな感じかもしれない。

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