なぜ安倍首相が若者にウケるのか
少し前の話だが、都知事選で田母神俊雄候補の支持者が最も多かったのが20代だったことが話題になった。そして大学で教えていても感じるが、右傾化を急ぐ安倍首相は若者の支持率が高い。フランスでも外国人排斥を掲げる極右の「国民戦線」の支持者は、若者に多いという。
この20年ほどのグローバリズムとインターネットの普及によって、感情的な保守化が世界的に起きているのではないかと常々考えていた。連休中にたまたま読んだ「毎日新聞」の夕刊で、宮台真司氏がそのことにズバリ触れていたので、書いておく。
「冷戦終了後、グローバル化を背景に中間層分解と共同体空洞化が進み、不安ゆえに強がりたがる市民は、理性ではなく感情によって政治的態度を決める「ポピュリズム」に駆られがちです。彼らにとっては貧乏よりも孤独が意識されます。安倍首相の高支持率や「保守回帰」の背景にも、孤独による<感情の劣化>がある」
「ネットでは人は見たいものしか見ず、付き合いたい者としか付き合わない。ここに分断が生じます。異なる考えの人の批判にさらされることなく、閉じたクラスター(集団)の中で愚かな議論が永久にぐるぐる回ります」
「鬱屈や不安にさいなまれがちな孤独な人たちが、カタルシスや擬似的な連帯を求めて、浅ましいポピュリズムや排外主義に屈し、民主主義がむしばまれる。多少なりとも先進国に共通する現象です」
書き写していて、暗澹たる気分になった。つまりは歴史的必然というわけで、誰が悪いわけでもないのだから。「この事態に打つ手はあるのでしょうか」という記者に、宮台氏は言う。
「各国を巻き込む大規模な現象だから「マクロな世直し」はもう無理でしょう。ならば「国がどうあれ、政治経済がどうあれ、自分たちは生き残る」というミクロな営みを続けるしかない」
「どのみち社会は将来回らなくなります。だからマクロな世直しとは別に、家族や友人など「ミクロなわれわれ」で利他的な人間の輪を育てます」
ううん、ミクロ単位か。朝から元気が出るような出ないような結論になってしまった。この1ページ記事の題は「「うまく生きろ」がこの国を滅ぼす」。つまりは利他的に生きろということだが、就活中の学生にはとても言えない。
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