学問は役に立つのか
新聞や雑誌で気になった記事があると、切り取っておく。そして暇な時にもう一度読む。だいぶ前に切り取った文章が書類の合間から出てくることも多い。昨日出てきて驚いたのは、佐伯啓思氏のインタビュー。
去年10月の朝日新聞夕刊に載っていたもので、「人生の贈りもの」というシリーズ。佐伯氏は京大教授で社会思想が専門だが、見出しは「知恵ある生き方 学生に示したい」。
彼は「知識は生き方や人間関係そのもの」「学問は生き方の支えになる」という。ところが「いま大学は就職斡旋所になってしまった」と嘆く。
私も大学で教えているが、日々教える知識が何のためになるかという点にいつも疑問があった。自分の学生時代を考えても、大学時代に学んだことでその後役に立ったのはフランス語くらいだと思っていた。
佐伯氏の言葉を読んではっとした。学問を教えることで、ものを考える力をつけさせ、生きてゆくうえで支えとなる。こんな当然のことを最近は忘れていた。自分のことを考えても、大学で学んだのは生き方そのものだったと考え直す。
佐伯氏は言う。「知識を媒介にして人格的に触れ合うという、教養を大切にする生き方を示したいんです」「教養とは知識ではなく知恵。学んだものが経験を通じて自分の中に蓄積され、いつでも答えを出せる態勢を作ることです」
何とまっとうな考え。私は毎日学生の就職ばかり心配しているが、こんな言葉を聞くと元気が出る。教養を大切にした生き方をする人間を育てることのほうが、目先の就職の世話よりもずっと大事なことだと自分に言い聞かせる。
それにしても、学生は本を読まない。少し前の朝日新聞では1日の読書時間がゼロという大学生が4割を超えたという記事があった。こうなると、教養も何もない。どこから始めたらいいのか。結局、悩みながらの毎日は続く。
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