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2014年5月26日 (月)

『青天の霹靂』はちょっといい映画

傑作だと大声で言うものではないが、「ちょっといい映画」を見た。劇団ひとりの初監督作品『青天の霹靂』。予告編が妙に気になったし、『悪人』や『告白』で知られる東宝の川村元気プロデュースというのもあった。

まず冒頭で大泉洋がトランプのカードを見せながら、自分の半生を語るシーンにやられた。このワンカットでするすると物語に入ってゆく。売れないマジシャンの晴夫の生活。ホームレスの父の死を知って現場に駆けつけて、時代は一挙に40年前に。

1973年の浅草で、自分の父(劇団ひとり)や母(柴崎コウ)がマジックで暮らしている。母の妊娠を知るが、生まれてくるのは自分のはず。父親から母に捨てられたと聞いていた晴夫は、その真実を知る。

こう書くと、ずいぶんベタな人情話に見える。確かにお涙頂戴のありえない話だが、これが乗せられてしまう。まず、大泉洋と劇団ひとりの演技が抜群。彼らがコンビを組んで言い争いをしながらやる「喧嘩マジック」には、大笑いしてしまった。

母役の柴崎コウもいい感じだし、劇場支配人役の風間杜夫が『熱海殺人事件』を思わせるほどピッタリ。そのほかにも笹野高史や中村育二など個性派が揃っていたが、主役級以外の描き方はちょっと平板か。

大泉と劇団ひとりが夕方の川べりで話したり、大泉が入院中の柴崎と話したりするシーンを、ワンカットで惚れ惚れするようなカメラで見せてくれる。ああ、この監督には確実に映画の才能があると思った。73年の浅草の再現も、その劇場でマジックを見る観客の雰囲気も、初監督とは思えないほど巧み。何より大泉のマジックそのものに、本物感があった。

後半は音楽が多いし、無理に泣かせようとするのがちょっとつらいが、96分というコンパクトな長さのためか、爽やかな印象を持った。終わりもシンプルでうまい。久しぶりに俳優出身の才人監督が出た。次が楽しみだ。

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