『ケープタウン』の怖さ
8月30日公開の『ケープタウン』を見た。2年前の今頃にケープタウンに出張で行ったが、この映画はそこでのロケと聞いて、興味が湧いた。何とも不思議な街だったからだ。
銀行やホテルなどの豪華な高層ビルが立ち並ぶが、カフェも映画館も書店もない。少し行くと海辺に面したとんでもない豪華な住宅街があったり、別の方向には貧民窟のような地域が広がったりする。そんな街を1人で歩くと、どこからか根源的な怖さが迫ってきた。
この映画を見ても、その感じは伝わってきた。娘の殺人事件を追いかける2人の刑事の物語だが、白人のブライアン(オーランド・ブルーム)の元妻は歯科医と同棲中でとんでもない豪邸に住んでいる。もう1人の黒人の刑事アリ(フォレスト・ウィテカー)の恋人は貧民窟に住んでいる。
最初は単なる殺人事件だと思っていたが、少女から出てきた薬物から、とんでもない組織の存在が明らかになる。どんどん人が死んでゆくので、途中で追うのも大変になるが、その裏にいるかつて黒人を殺す薬を開発した男とその組織が次第に見えてくる。
南アフリカという長い奴隷制度の歴史を持つ国ならではのシリアスなドラマだが、2人の刑事のバディ・ムービーのようでもあり、最後に2人の家族にまで危機が迫ってくるに至って、ある種のB級的な刑事もののようにも見えた。
冒頭から緊迫した時間を過ごしたが、演出が社会派ドラマとしB級ドラマの間を揺れて中途半端な感じが残った。私自身が、たった1度行ったきりで4泊しかしていないのに、あの街の雰囲気の謎を追いかけていたからかもしれないけれど。
2年前はケープタウンから船に乗って、ロビン島のマンデラが収容された刑務所跡にも行った。マンデラの名前を聞くと、その牢獄の狭さを思い出す。この映画でもマンデラの言葉が出てくるが、あの街は今もアパルトヘイトの歴史を引きずっている。今年はマンデラの映画が2本も公開されるが、この映画もその延長線上で見た方がいいかもしれない。
監督はフランスのジェローム・サルで、フランスと南アの合作。映画では英語と現地語が混じって使われているが、これも実際に近い。最近、フランス語を使わないフランス映画が増えてきた。
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