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2014年6月10日 (火)

鈴木敏夫『仕事道楽』に納得

鈴木敏夫著『仕事道楽 新版』を読んだ。副題に「スタジオジブリの現場」とある通り、著者は宮崎駿や高畑勲のアニメのプロデューサーとして名高い。派手な場所に出ない宮崎駿の代理としてアカデミー賞やベルリンなどに行っていたので、いわゆる「出たがり」だと思っていた。

ところが今回この本を読んで、天性のプロデューサーだと思った。どのようにして宮崎、高畑のような天才を見出し、何十年にもわたって傑作を作らせたのかが手に取るようによくわかる。

最初の「序にかえて」で妙に納得した。「まっさらな状態に自分を置くと次がうまくいく」「終わったものは終わったものであり、いま動いているこの瞬間が大事である」。自分のこれまでの仕事を語る本でこう書くのはおかしいし、それ以上に感覚的に同意する。

鈴木氏が2人の天才と知り合ったのは、徳間書店で創刊されたばかりの『アニメージュ』というアニメ雑誌の編集者として。高畑勲に電話すると、会いたくない理由を1時間も話した後に、宮崎駿を紹介して電話を代わる。宮崎は『太陽の王子ホルス』については話すことがあるので16ページくれと言ったという。

創刊号に16ページは取れなかったが、2人とはその後取材で何度も会う。会うとそれぞれ3時間は話す。取材ノートにしゃべる口調までメモして、それから1人で喫茶店に入ってまとめる。そして「彼らと教養を共有したい」と思って彼らの挙げる本を読む。高畑がよく口にしたのは、アンドレ・バザンの『映画とは何か』とドナルド・リチーの『映画のどこをどう読むか』。

「教養の共有の程度は相槌の打ち方にあらわれますから。『へえ、なるほど』をくりかえす人っているでしょう。それではダメだと思う」

ここまで2章でわずか30ページだが、名編集者がプロデューサーになってゆく様子に納得。そして取材を続けるうちに次回作を手伝うことになり、『風の谷のナウシカ』公開翌年の1985年に徳間書店内にスタジオジブリを作る。これから先もおもしろいエピソードが満載だが、あとはご一読を。新書なのですぐに読める。

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