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2014年6月 5日 (木)

ジョン・タトゥーロが描くニューヨーク

ジョン・タトゥーロと言えばコーエン兄弟の映画に出てくるエキセントリックな役が印象的だが、監督もしている。7月11日公開の『ジゴロ・イン・ニューヨーク』は彼の4本目の監督作で、本人とウディ・アレンが主役という。私は昨秋のトロント映画祭で、満員で入れなかった。

ニューヨークが舞台で、本屋を潰したマレー(ウディ・アレン)が、花屋でバイトをするフィオラヴァンテ(タトゥーロ)をジゴロに仕立てて、ポン引きを始める。

出だしは、ニューヨークのブルックリンでアレンの機関銃のような会話で始まるので、アレンの映画そのもののように見える。落ち目の男2人が始める妙な商売というのもアレンらしい。ところが、最初の客である医師の女が現れた時から、ちょっと調子が変わる。

医師を演じるのはシャロン・ストーンだが、彼女が本当の金持ちおばさんのようにリアルに見える。日本の生け花風にアレンジされた赤い花を持ってきたタトゥーロに、すーっと惹かれてゆく。

それから商売は繁盛するが、アヴィガルというユダヤ人の未亡人が現れると、また驚く。フランスのヴァネッサ・パラディが演じているが、ユダヤの掟通り人前でかつらをかぶり、完全に地味な格好をしている。そのうえ、前歯が少し欠けていて、美人だがやつれた感じがこれまたリアル。

パラディもまた、相手の気持ちを思いやるタトゥーロに心を動かされる。タトゥーロは全くジゴロらしくないが、誠実で純朴で気が利くタイプ。彼が着る紺のウールの短めのダブルコートが、その人柄を物語る。

パラディとの恋は、彼女の幼馴染のユダヤ人やユダヤ人のコミュニティに邪魔されるが、問題はそこにはない。タトゥーロの2つのまっとうな出会いの余韻に浸ることができる。タトゥーロの動きが絶妙で、女優2人がこれまでと全く違った魅力を見せてくれる。

ジョン・タトゥーロの描くニューヨークは、ウディ・アレンのようなテンポの良さやおかしさはないが、男女の機微の本質が見える。個人的には、モテる男とはこういうものかと妙に納得した。

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