『ウィークエンドはパリで』に見る外国人のパリ
9月に公開の『ウィークエンドはパリで』を見た。イギリス人夫妻が30年目の結婚記念日をパりで過ごすという、いかにも安易な設定が何となく見たくなった。
監督は『ノッティングヒルの恋人』のロジャー・ミッシェル、夫ニックは『サッチャー 鉄の女の涙』でサッチャーの夫役を演じたジム・ブロードベント、妻メグは『トスカーナの休日』のリンゼイ・ダンカンという、ある意味で「安心」の布陣。
真面目でドジな大学の哲学教授の夫はひたすら妻を愛し、中学の生物教師で好奇心旺盛な妻は夫を面倒くさがりながらも、結局離れられない。その2人の行きつ戻りつする関係を、パリを舞台に描いた会話劇の93分。
ジョークと本音を交互に入れながら話す、いかにもイギリス的なユーモアに満ちた2人の会話をおもしろいと思えるかで評価は分かれるだろう。私はうまいと思いながらも、あまり乗れなかった。
それはたぶん彼らのパリの見方があまりに日常的だからかもしれない。最初のショットはユーロスターの車内。あっという間に着いて、地下鉄に乗ってシャトー・ルージュ駅で降りてホテルへ。思い出のホテルのはずが気に入らず、タクシーで最高級のプラザ・アテネへ。
こんな感じで最後までするすると流れる。飛行機を10時間以上乗り継いでパリに行く私とは訳が違う。何ごとも行き当たりばったりで、もちろんそれがこの映画の魅力なのだろうが、私は拍子が抜けた感じ。
個人的に気になったのは2つ。1つはホテルで夫婦が見るゴダールの『はなればなれに』(1964)だが、これは1998年の映画祭「アニエス ベーは映画が大好き」で私が上映するまで、行方が知れなかった作品だ。ロンドンのコロンビア映画にきれいなプリントがあった。いずれにしろゴダールのなかでもあまり知られていないシネフィル好みの作品だが、これがこの映画に合うのかなと思った。ラストも3人が映画を真似するわけだし。
もう1つは、夫婦が偶然に会ったアメリカ人の旧友に誘われてパーティに行くシーン。実は私はこんな感じのインテリが集まるパーティによく誘われるが、だいたい退屈してしまう。この映画にはその感じがよく出ていて、妙にツボにはまってしまった。
というわけで、久しぶりにパリに行きたくなった。
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