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2014年6月 1日 (日)

赤レンガの中のフォートリエ

東京ステーションギャラリーは昔から赤レンガの壁が魅力的だったが、新しくなってから行ったことがなかった。行こうと思ったのは、7月13日まで開催中の「ジャン・フォートリエ」展を見るため。

フォートリエは戦後フランス美術の重要な存在で、1997年にポンピドゥー・センター展を東京都現代美術館で企画した時にはもちろん含まれていた。しかしその作品をまとめて見たことはなかった。今回は日本で初の回顧展という。

フォートリエといえば、まるで消化不良の胃の中を描いたような不気味な絵が印象的だった。今回の個展を見ると、それが胃の中というよりは、人間の姿だったことがわかって衝撃を受けた。

1920年代の絵は、ピカソやマチスの影響を受けながら、フォーヴィズムやドイツ表現主義に近い、暗い表情の人々を描いている。だんだんに人が影のように朧になり、画面に黒が増える。あるいは絵の具の厚塗りが出てくる。

いわゆるフォートリエらしさが出てくるのは、1940年代から。真ん中にぼってりと厚塗りした奇妙な物体が描かれている。これが「人質」シリーズで、並べてみるとそれがさまざまに虐げられた捕虜の顔だとわかる。これらが2階の赤レンガの壁面に並んでいると、異常な迫力を生む。

「人質」シリーズの傑作の何点かが、日本の美術館の所蔵であったことにも驚いた。大原美術館、国立国際美術館、ブリジストン美術館など。私は知らなかったが、1958年には来日して南画廊で個展を開いている。「アンフォルメル」の先駆者として歓待を受けたようだ。

戦後の作品も相変わらず真ん中に奇妙な物体が描かれているが、次第に軽みを帯びてくる。白が多くなり、1960年代からは全体にいくつもの斜線が引かれている。

後半に15分のビデオ映像があったが、いかにも人を馬鹿にしたような表情がおかしかった。そこで映像を見ている観客に見知った顔がいると思ったら、高畑勲監督だった。彼が絵巻物好きなのは有名だが、こういう展覧会まで見ているとは。

昨年末のカイユボット展もそうだったが、日本ではあまり知られていない作家の個展はありがたい。内外の美術館や個人から作品を集めた労作というべき展覧会だ。カタログを買ったら、ポンピドゥー・センターの学芸員だった友人のアムリンさんが書いていた。連絡を取りたいが、どうしたらいいのか。

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