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2014年6月29日 (日)

増村映画の女性たち

もう、暇さえあるとフィルムセンターに行って、増村を見る。去年の清水宏も良かったが、増村映画にはクセになるような毒がある。というわけで、最近見たのは『親不孝通り』(58)、『氾濫』(59)、『美貌に罪あり』(59)。

この3本で一番良かったのは、『氾濫』。これは『巨人と玩具』に似て、会社の中に生きる男を描いたものだが、1人として善人がいない。みんな自分の欲望を満たすためだけに生きている悪人ばかり。万事を金で解決しようとする男たちと情熱に身を任せる女たちがすれ違う。

佐分利信演じる主人公真田は技術者出身の会社役員だが、妻(沢村貞子)は若いピアノ教師(船越英二)に誘惑され、娘(若尾文子)は野心家の東大生(川崎敬三)に騙されて最後に捨てられる。真田の友人の大学教授(中村伸郎)は、愛人との手切れ金を手に入れるために真田の会社を騙す。

真田もかつて付き合った女と再会して関係を持つが、彼女は真田に嘘をついて金をもらっていた。そんな嫌な真実が次々と真田の前に現れてくる。佐分利信は増村映画にしては珍しく欲望や感情を出さず抑えた演技だが、これが生きている。

嫌味でずるい大学教授を演じる中村伸郎が抜群だし、出世のために何でもやる川崎敬三も印象に残る。女たちは増村映画にしては影が薄いが、中村伸郎の妻が気が狂ったように怒りだすさまを、中村のアップを見せながら遠くに写すショットは忘れがたい。

あるいは沢村貞子は、夫に「こんどこそ私があなたを捨てていいはずだわ」と言い放ち、川崎に捨てられる幼馴染の女(叶順子)は別れ際に「忘れちゃ駄目よ、あんたを本当に好きなのは世界中で私だけよ」と言う。

ラストで川崎が社長令嬢と結婚して会社の巨大なタンクを登るシーンの象徴性は、まるでアントニオーニの60年代の映画のようだ。

『親不孝通り』は、不良大学生役の川口浩が、姉を捨てた会社員(船越英二)に復讐するためにその妹(野添ひとみ)を誘惑して捨てるという話。野添は川口に捨てられても「ムダでもいいの。一生好き」「どこへ行っても好き」と言い放ち、川口の姉はそれに影響されて船越に結婚を迫る。

結局、女たちの激情が伝染して、2組はもとのさやに納まる。これは初期増村の典型的なパターンだろう。だが、増村映画にしては、お金のやり取りが少ない。川口は外国人を騙して札束をヒラヒラさせてはいるが。

ところで「親不孝通り」は福岡の天神にあるが、この映画では銀座6丁目にある。こちらが元祖だろうか。

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