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2014年6月18日 (水)

『ガリバー旅行記』のグロテスクさ

スウィフトの『ガリバー旅行記』を読んだ。もちろん子供の頃に絵本や童話で読んでいるが、本当の原作を読んだことがなかった。だいぶ前に「読売新聞」の斎藤美奈子「名作うしろ読み」で取り上げられていて、読みたくなった。買ってみると、岩波文庫で400ページを超す大著。

イギリスで出版されたのが1726年で、大英博物館やルーヴル美術館ができたのも同じ18世紀だ。つまりは世界を旅して集めた珍しいものを見せましょうという時代。もちろんそれは19世紀末の映画の誕生につながる。

読んでみると、まず完全な大人向けの本であることに驚いた。毎ページごとに人間社会への皮肉が出てくる。特に政治については長い。そしてスカトロジーかと思うほど、尿や糞に関する描写も多い。最後には、世界を旅した主人公が、人間を見ると気味が悪くなるという結末だ。

第一篇はリリパット国でこれは有名な小人の国。第二篇がブロブディンナグ国で、これは巨人の国だが、こういう国名は知らなかった。ここまでが童話になった世界だが、それはこの本の半分に過ぎない。

次に第3篇はラピュータ、バルニバーニ、グラブダブドリップ、ラグナグ、そして日本が出てくる。ラピュータは空飛ぶ島で、科学を偏重する。バルニバーニはその支配下にある。グラブダブトリップは魔法使いの国で、ラグナグは不死の人が住む。この2つの記述は短いが、さらに短いのが、日本。

現実に存在する唯一の国なので遠慮したのか、踏絵を免れたことしか書かれていない。ザモスキという港に着いて江戸に行き、皇帝に謁見すると、ナンガサク(長崎)まで送ってもらう。日本についての描写がないのが残念だ。

そうして第四篇の最後の国がフウイヌム。ここはフウイヌムという馬が支配しており、ヤフーと呼ばれる人間が家畜になっている。馬は知性があり、人間は野蛮な悪者。

そうして最後の旅から自宅に帰る。「だが、家の者たちを見た時、私の心中に忽ち憎悪と軽蔑の念だけがこみ上げてきたことを、ここに率直に告白しておかなければならない。……家に入ると、いきなり妻が飛びついてきて私をしっかり抱き、接吻した。もうずいぶん永い間この嫌らしい動物に触れられたことがなく、ほとんどその感覚を忘れていた私は、忽ち気を失って倒れてしまった。……連中の体臭には実に辟易した」

最後まで読むと、作者の人間嫌いが何となくわかってくるから不思議だ。

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