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2014年6月16日 (月)

満員の『グランド・ブダペスト・ホテル』

先日ここで『グランド・ブダペスト・ホテル』に触れた時、「あと2回は見たい」と書いたが、公開2週目の日曜夕方に劇場に行ってみた。何と満員。漏れ聞こえるお客さんの話だと、土曜日は全回満員だったようだ。

比較的おとなしそうな客層だったが、若いカップルなどもいて、本当についていけるかなと勝手に心配にもなった。

さすがに2度目に見ると、前回気づかなかったことが見えてくる。最初と最後に出てくるのは、『グランド・ブダペスト・ホテル』という本を持って、その作家の墓にお参りをする少女の姿。墓にはさまざまなホテルの鍵がかけてあるのも、映画を見れば意味がわかる。これが現代。

そしてその老作家(トム・ウィルキンソン)がその本について語りだすのが、1985年。そして若き作家(ジュード・ロウ)がホテルの主に会って、その話を聞くのが1968年。ここで画面はシネスコになる。普通はシネスコになるとカーテンの左右が広がって画面が広がるが、1本の映画の中でヴィスタからシネスコになると、上下が狭くなる感じ。

そしてホテルの主が自分の若い頃を語りだすと、1932年になって、スタンダード画面になる。すると上下が目一杯に広がって、人物がくっきり大きく見える。映画の大半はこれで進む。時おり、1968年に戻りながら。

前に「ルビッチのようだ」と書いたけれど、確かにホテルを舞台にしたお洒落なドラマという点では『極楽特急』(1932)などを思わせるが、こちらの映画にはルビッチと違って恋愛が中心ではない。そもそも女性があまり出てこない。84歳の老婆を演じてすぐに死んでしまうティルダ・スウィントンとベルボーイの恋人(シアーシャ・ローナン)くらい。

レイフ・ファインズ演じる主人公のムッシュ・グスタヴとベルボーイが逃げに逃げるアクションとサスペンスは、むしろバスター・キートンの『セブン・チャンス』などのスラップスティックに近い。常に男性同士の友情がポイントというのは、西部劇やヤクザ映画のようなホモ・ソーシャルな世界だ。

個人的には、1968年のシネスコの横長の画面に映る寂れた高級ホテルを見ながら、自分が若い頃に泊まったヨーロッパの保養地の高級ホテルを思い出した。ロカルノの「グランド・ホテル」、ベネチア・リド島の「ホテル・デ・バン」、パレルモの「ヴィラ・イジェア」、タオルミーナの「サン・ドメニコ」、サン・セバスチャンの「マリア・クリスティーナ」等々。

この映画の「鍵の秘密結社のコンシエルジュたちを見ながら、自分が泊まったどのホテルにもいた威厳のある年配のコンシエルジュの姿が目に浮かんだ。また、昔語り(かつ自慢話)になってしまった。この映画はDVDが出たら買いたい。

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コメント

ジョージ・クルーニーが銃撃戦のシーン?でワンカットだけカメオ出演している、という噂を聞いたのですがお気づきになりましたか?

投稿: | 2014年6月20日 (金) 23時59分

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