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2014年7月12日 (土)

1967年の増村2本

『妻は告白する』とか『赤い天使』のような傑作ではないが、そこそこの2本を見た。共に1967年の作品で、『妻二人』と『痴人の愛』。どちらも中盤まではだれるが、後半ぐっと締まってくる。

『妻二人』は、中年の会社員健三(高橋幸治)がある時バーで偶然に学生時代の恋人・順子(岡田茉莉子)と会うところから始まる。健三は出版社社長の令嬢・道子(若尾文子)を妻としていたが、順子のもとに通い出す。

岡田と若尾以外は、ひどい人間ばかりが出てくる。三島雅夫演じる社長は、社内に愛人を抱えており、道子の妹(江波杏子)は贅沢でやりたい放題。彼女が引っかかる小林(伊藤孝雄)は、出世のために何でもやる。そんな小林に百万円を要求されたうえ、乱暴されそうになって道子はピストルを放つ。

その中で高橋幸治は、能面のような無表情の演技を続ける。人生は諦めたけれども、人間としての誇りを何とか保とうとする感じ。岡田はまわりに気を使い、健気に1人で生きようとし、最後は潔く去ってゆく。若尾は「清く、正しく、美しく」をモットーとしながらも、最後は自分の犯罪を打ち明ける決断をする。

ラストの警察の階段のシーンがいい。階段を下りる高橋は岡田に「一生に一度の恋は終わったな」。そこに外からの光がまぶしく差し込む。女優2人の魅力だけで成り立つ映画だろう。

『痴人の愛』は、原作は有名だし、「お馬さんごっこ」のイメージが強烈だが、増村映画としては単調だ。趣味もなく酒も飲まない会社員(小沢昭一)は、実は18歳のナオミ(安田道代)と暮らしている。ある時とうとうナオミと関係を持って籍を入れるが、そこからナオミの男遊びが始まる。

派手なナオミの遊びっぷりと男の勤める工場が交互に写され、男は毎回ナオミを怒りながらも許してしまう。おもしろいのは、小沢が「ナオミの日記」として写真を撮ったアルバムを作っていることで、ナオミがいなくなると小沢はそれを眺めて嘆く。映画では写らないが、写真ではしっかり乳首まで見える。

この映画では小沢は出世を諦め、女に尽くし、最後は会社も辞める。その意味では増村映画の男性像と大きく異なる。ナオミがバカすぎておもしろくない分、小沢が女性の役割も務めているのかもしれない。終盤の小沢の狂気ぶりは圧倒的で、珍しく男優が際立つ映画だ。

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コメント

いつも楽しみに拝読しております。増村特集、明日の「やくざ絶唱」はぜひ観に行きたいと思っています。ところで、「女は告白する」は「妻は告白する」のことですよね。

投稿: ウエダテルヒサ | 2014年7月12日 (土) 09時46分

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