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2014年7月27日 (日)

増村のヤクザ映画2本

増村保造のヤクザ映画を2本見た。『不敵な男』(58)と『からっ風野郎』(60)でどちらも傑作とは言い難いが、それぞれに魅力があった。凡作でも増村の初期作品は心躍る。

どちらも刑務所帰りのチンピラを主人公にしている点が似ている。強姦した女を次第に好きになり、最後に銃弾に倒れるところも同じ。脚本としては新藤兼人が書いた『不敵な男』の方がよくできている。

こちらの主人公は川口浩で、田舎から出てきた女(野添ひとみ)を東京駅で騙して自分の部屋に連れ込み、犯す。警察に捕まって刑務所入りし、1年後に出所。おもしろいのは野添が川口に復讐するところで、彼女が川口を好きになるのは本当に映画のラストだ。男に騙されない、気の強い野添がキラキラと光る。

もう1つの見どころは、終盤に川口が仲間と警察に追われて逃げ回り、銃撃戦を繰り広げる場面。光と影のスペクタクルは迫力満点で、川口が「一目あの女に会いたい。あの目を見たい」とつぶやくのも情けなくていい。アメリカのギャング映画みたい。

『からっ風野郎』は、主演の三島由紀夫が何とも異様だ。最初に出てきた時はセリフ回しが下手で恥ずかしくなるが、だんだんそのぎこちなさが馬鹿なチンピラのようにも見えてくる。彼の幼馴染み役の船越英二が大卒で、三島は小学校卒という設定。東大を出て大蔵省に入り、小説家として既に有名な35歳の三島が、敢えてそんな役を演じたかったのだろう。

三島が演じるのは落ち目な暴力団の2代目だが、出所後、所有する映画館の事務員(若尾文子)を犯す。ちょっと頭の弱そうな女だが、三島を好きになる。妊娠した若尾に三島は堕胎薬を飲ませようとするが、若尾は気づく。「どんなことをされたって生むと言ったら生むわ。殺しなさいよ。あんたきちがいよ、だけど好きなの」「負けたよ。おまえみたいな女は初めてだ」。これぞ若尾の真骨頂。

ラストは白いジャケットを着た三島がエレベーターで刺される。これまたアメリカのB級映画みたいで、かなりカッコいい。いじけたような顔で挙動不審なチンピラを演じる三島の姿は、小説家としての華麗な彼のもう一つの面のようにも見えた。

『不敵な男』は川口の思いに野添が心変わりし、『からっ風野郎』は若尾の愛に三島が応える。愛の勝利なのだが、もちろんそれは成就しない。

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