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2014年7月 9日 (水)

田宮二郎、登場

フィルムセンターで増村保造の『黒の試走車(テストカー)』を見た。田宮二郎がこの映画でスターになったというから、興味があった。田宮二郎と言えば、私の世代にとっては「クイズタイムショック」の司会であり、「白い巨塔」シリーズの医師だった。

高度成長時代にピッタリのエネルギッシュで濃い顔だが、この映画では、まさに企業戦士を演じる。スポーツカーの発売をめぐり、しのぎを削る自動車メーカー2社の話で、田宮はその1社、タイガー自動車の若手社員。

田宮の上司が高松英郎で、彼ら2人を中心にライバルのヤマト自動車とのスパイ合戦が描かれる。『巨人と玩具』の系列のモーレツ会社員もので、女性の活躍は少ないが、この映画では田宮の恋人役の叶順子が大きな役割を果たす。

叶は田宮に頼まれて、まずヤマト自動車の部長(菅井一郎)が通うバーに勤め、秘密を聞き出す。さらに決定的な情報を得るために、田宮は叶に菅井と寝てくれと頼む。「君には会社がわからないんだ。愛しているから頼むんだよ」「パンパンのヒモみたいないことがよく言えるわね。キチガイね、あんたも」。

そうしてヤマトの販売価格を知り、タイガーはより安い価格での販売に成功するが、発売されたばかりの自動車に事故が起こる。その陰に社内のスパイの影を見つけた高松は、怪しい同僚を締め上げて、自殺に追い込む。それを見た田宮は「僕たちは刑事ですか」「ここは警察ですか」「人を殺してもいいんですか」「会社って何ですか」「あなたは白いYシャツを脱いでカーキ色の軍服を着たらどうですか」

そうして田宮は辞表を出し、叶と元の鞘に収まる。つまりは叶が投げつけた日本株式会社への罵詈雑言を、そのまま田宮が自分の上司に向けた形だから、この映画も女性の本音が映画全体を決定づける。

社内外に何人ものスパイがいて、1人が見つかっても新たなスパイが次々に現れる状況は迫力満点だ。しかし、女性はあくまで脇に置かれ、叶でさえも自分で考えて行動するタイプではない。その意味では『女は告白する』を見た後では、物足りなさも残る。出てくる会社員たちは、みんなあまりにも類型的でカリカチュアでしかない。

ヤマト自動車の菅井が元関東軍参謀という設定がいい。瀬島龍三みたいでリアル。増村映画には必ずこうした戦争の影が出てくるようだ。

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