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2014年7月18日 (金)

旬の近藤正臣を楽しむ

私が小学生の時、一番カッコよかった芸能人は近藤正臣だった。テレビドラマ「柔道一直線」で主人公のライバル役を演じ、つま先でピアノを弾く姿を鮮明に覚えている。長めの髪を右手でさっと掻きあげて現れる姿に憧れた。

そんな近藤のまさに旬の演技を見られたのが、増村保造の『動脈列島』(1975)。新幹線の騒音公害に怒った医師が、たった一人で新幹線爆破を企てる内容だが、近藤の孤独なテロリスト姿が印象的だ。

最初の新幹線が走るシーンに驚く。新幹線がかなり汚れていて、そのうえに木造の住宅を揺らすようにして走る。1970年代の日本を、高度成長に陰りが出てきたような、全体にねっとりした情感で捉えている。

医師役の近藤に対決するのが、警察庁のエリートを演じる田宮二郎。いつも不敵な微笑を浮かべながら、思い切った指示を出してゆく。失敗しても「最後に勝てばいいですから」。

映画は近藤が10日後の爆破宣言をしてからの毎日を、「実行9日前」とクレジットを出しながら進む。毎日少しずつ警察の捜査が進むが、近藤はその裏をかく行動に出る。その駆け引きがきちんと映像化されているので、見ていて最後まで飽きない。

とりわけ4日前に名前と写真を公開して指名手配になってからがいい。翌日の夜に近藤が国鉄総裁(山村聡)の自宅を訪れるシーンなど、ありえないと思いながらもぞくぞくする。

しかし増村の映画としては女性の描き方が弱い。薬剤師の恋人役の関根恵子(また乳房を見せるが)も、逃亡中に知り合うバーの女役の梶芽衣子も、あくまで受け身の存在でしかない。関根は最後のシーンで何かやるかと思ったが不発で、自首する近藤に抱きつくだけ。

この時期になると、増村映画には脚本にも演出にも躍動感はない。アップが多く、テレビを見ているような安定した仕上がりに見えたが、それでも70年代特有の疲弊した時代の雰囲気をよく表現していると思った。

学生と会ったので感想を聞いたら「最初から終わりが読めちゃって」と言われた。娯楽映画はそれを知っていて楽しむものだが、最近はあくまでネタバレを嫌うのだろうか。

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