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2014年7月 7日 (月)

『渇き。』に退屈

最近はあらゆる種類の映画を見るせいか、ほとんどの映画をそれなりにおもしろいと思うようになった。もちろん本当に好きな作品は文章を読んでもらえばわかると思うが、それ以外も思い切りけなすことは少ない。ところが最近、心底嫌いな映画を見た。

劇場で公開中の中島哲也監督の『渇き。』。まず、娘を探す主人公役の役所広司は自分勝手で乱暴で、そのうえ途中から汗だくで血まみれになる。それを最後まで見続けるのはつらい。妻との愛憎劇も鬱陶しいし、挟み込まれる娘の友人たちの騒ぐ姿も不快でしかない。

役所広司(とたぶん妻役の黒沢あすか)以外は、全く内面を持たず、人形のように表面だけが現れては消える。國村隼、オダギリ・ジョー、中谷美紀といった芸達者たちも、変わりばんこに現れては消えてゆき、物語の収束がない。時々現れる刑事役の妻夫木聡も、笑っているだけ。

全体に同じような映像の繰り返しが多い。3年前と現在を目まぐるしく往復したり、現在も数字だけで時間の経過が示されるが、こざかしく感じる。暴力的な場面にアニメを挿入して華麗な映像で見せてゆくが、それもこの映画ではわざとらしく見える。

唯一見るべきは、娘の加奈子を演じる小松菜奈だろう。近頃流行の身近な可愛い子ではなく、絶対的に輝く美少女を久しぶりに見た気がする。彼に騙される少年(独白も多い重要な役)の清水尋也も、その無表情ぶりが悪くない。後の俳優たちは、みんなわざとらしくチープに見えた。

もちろん中島監督は全部意識して作ったに違いない。興収39億円の『告白』の後に、あえて絶対的に嫌な感じの映画にしてやろうと思ったのだろう。その作為さえも感じる演出だ。興収10億円も厳しいのではないか。

観客は20代が圧倒的に多い。学生千円というのも効いているのだろう。私は映画を見ながら退屈して早く終わってくれと思ったが、似た気分は『TOKYO TRIBE』でも味わった気がしてきた。

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