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2014年7月 5日 (土)

『思い出のマーニー』もWヒロイン アナから杏奈へ

7月19日公開のスタジオジブリのアニメ『思い出のマーニー』を見た。江戸東京博物館で開催される「思い出のマーニー×種田陽平展」を私の学生が手伝っていることもあり、早めに見たくなった。

それ以上に気になっていたのは、大ヒット映画『アナと雪の女王』と同じく、ダブルヒロインという点だった。私は勝手に、今年の映画界は女性同士の愛の時代ではないかと考えている。ハードなレズだと、去年のカンヌでパルムドールを取ってこの春に公開された『アデル、ブルーは熱い色』があった。

『アナ雪』は姉妹の話だが、本当の王子様は現れず、女たちは男性なしで「ありのままに生きてゆく」。『思い出のマーニー』も男性の影が薄い女性たちの物語だった。

米林宏昌監督は、『借りぐらしのアリエッティ』の小人の少女の表現が抜群だった。孤独で意思の強い感じだったが、今回の主人公の杏奈はそれをさらに自閉症気味にした感じ。冒頭の学校のシーンで、描いているスケッチを先生に見られて、音を立てて鉛筆の芯を折り、「私は私が嫌い」と言うシーンが印象的だ。

養父母と暮らす杏奈は喘息持ちで、その治療のために夏休みを海辺の親戚の家で過ごすことになる。杏奈はそこで不思議な屋敷を見つけて出入りしているうちに、そこに住む金髪の少女マーニーと出会う。それはだんだん夢の世界だとわかってくるが、マーニーを好きになる気持ちは増すばかり。「あなたは私の中の秘密」「今までに会ったどの女の子よりもあなたが好き」

そこで出会った中年の女性画家(絵を描く様子は『風立ちぬ』そっくり)の話やその屋敷に東京から越してきた娘が部屋で見つけたものから、マーニーの存在がだんだんリアルなものになってゆく。それと共に杏奈の気持ちは大きく開かれてゆく。

最後のクレジットで杏奈の一言に、不覚にも泣いてしまった。中年男がなぜ少女の物語に涙するのか我ながら驚いた。まわりと仲良く生きてゆくことが苦手なぶきっちょな少女が、世界にまっすぐ立ち向かう瞬間を見たからかもしれない。

人物たちの背景に見える、霧にぼけたような森や海の感じがいい。にじんだようなタッチで夢幻の世界が広がってゆく。それはマーニーとの夢の中での出会いにつながっている。

やはり、杏奈を助ける人々も含めて、ほぼ女性だけで完結する映画だった。もちろん女性向けの映画だが、誰が見ても心に響くと思う。GWから初夏まで席巻した『アナ』に続き、この夏は老若男女が杏奈(あんな)の物語に浸るに違いない。

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コメント

それに対して『収容病棟』は男女、男男を描くという対極に位置する映画だと思いました。
また、男女の愛より男性患者と男性患者の絡み合いの方に重きを置いている気がします。

普成義の階下の恋人との蜜月よりも、唖者の通称ヤーパが(同性愛関係なしに温もりを求めているだけであったとしても)男性患者のベッドに入り込んだり、男性と男性が頬を寄せ合ったり、の方がインパクトの強い映像だったと思います。

投稿: | 2014年7月 5日 (土) 10時51分

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