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2014年7月23日 (水)

絵画と映画の関係について改めて考える

8月23日公開の日向寺太郎監督の『魂のリアリズム 画家 野田弘志』を見た。よくある画家のドキュメンタリーかと思ったが、これが思いのほか奥が深い。絵画と映画の関係について改めて考えた。

著名な画家を父親に持つ映画監督のジャン・ルノワールは、あるインタビューで「映画に比べて絵画の方が要素が少ない分、より深い探究ができる」と語っていた。フランスのある映画理論家(名前が出てこない!)は、「映画に絵画が出てくると、どこか居心地が悪くなる」と書いていた。

私は野田弘志という画家の名前は聞いたことがあったが、その作品を意識して見たことはなかった。だから冒頭で画家が膨大なフィルムを用意して、若い女性を写真に撮るシーンを見て驚いた。次にその女性は裸になっていた。それから彼が撮った写真とそれをもとに描かれた作品がいくつか見える。中には谷川俊太郎もいた。

それから1つの作品を実際に作る場面になる。何と写真を絵画の大きさに拡大して、その下にカーボンを敷いて写真の線をなぞってゆく。つまり写真を使うだけでなく、さらにカーボンまで使うのだから、いいのかそれで、という気になる。

最初にからくりを見せた後に、ひたすら手作業が写る。絵のサイズが相当大きいのでカーボンでなぞるだけでも容易ではない。それが終わると、線の上に写真を見ながら色を乗せてゆく。最初は全く似ていないが、色を重ねてゆくとだんだん写真に近くなる。

現実を写真を使って模写しながら、最後には現実より完璧な絵画が作られてゆく。その過程が同じ四角の枠を持つ映画に収められてゆく。時おり挟み込まれる北海道の風景も、一瞬、絵に見えてしまう。

野田の表情は柔らかいが、全身全霊で描いているのがよくわかる。「1年はかかりますよ」「本当はいつまでも終わらないんです」「まあこれでいいかな」

絵画教室でネクタイをして優しく生徒に接したり、雪の中を妻とごみを捨てに行ったり、あるいは鍼灸師に見てもらったり。そうした日常が風景と共に挟み込まれているのが心地よい。

声高に何かを主張する映像ではないが、絵を描くことそのものを端正な映像で淡々と見せてくれる。控えめだが時に力強い音楽もいい。ラストの白いキャンバスに白い絵具を塗るシーンに見とれてしまった。プレス資料を見たら、監督がビクトル・エリセが画家のアントニオ・ロペスを撮った『マルメロの陽光』に触発されたと書かれていて、なるほどと頷いた。

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