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2014年7月 2日 (水)

『ノア 約束の舟』の現代性

私はあえて学生に、当たる映画は正しい、と言う。趣味ではなく、映画関係の仕事に就きたいと思ったら、これが基本。拡大上映作品だと興収10億円がヒットの目安というから、先週末で興収が10億を越した『ノア 約束の舟』を見に行った。

本当のことを言うと、先週パラマウントのHさんに1回講義を頼んだら、「えー、まだ見てないの」と言われた。「見に行きます」と答えたが、どうも本気さが感じられなかったのだろうか、「TOHOシネマズギフトカード」なるものが送られてきた。見ないわけにはいかない。

これが予想以上におもしろかった。考えてみたら『レスラー』や『ブラック・スワン』を撮った才能ある監督だ。私の中で、人間の異常心理を撮ることに長けたアート系監督と、『ノア』の予告編の派手な映像が全く結びつかなかったので見る気が起こらなかったのだろう。

見てみると、地球全体が洪水に呑みこまれ、ノアの箱舟だけが助かるという壮大な物語を、随所に凝った(時おりヘンな)ショットを入れながら、全体としては人間ドラマとしてきちんと描いていた。

今回の異常心理は、ラッセル・クロウ演じるノア。箱舟に動物たちをひとつがいずつ乗せるが、自分の家族以外の人間を乗せない。人間をいったん滅ぼすという神の意志を実行するために、子供を生めないはずの長男セムの嫁が奇跡によって妊娠すると、女だったら即座に殺すと宣言する。

次男は恋人を箱舟に乗せようとするが、ノアに拒まれ、その宿敵と組む。ノアは家族全員を敵に回しながらも、狂人のように戦い続ける。いわば家族の物語で、見ていて痛々しいのは、これまでのこの監督の映画と同じ。

おもしろかったのは、箱舟がマストも帆もないただの巨大な箱だったこと。無造作に木を組んだ感じが現代美術みたいだと思ったら、アンセルム・キーファーやスターン兄弟をモチーフにしたとパンフレットに書いてあった。驚いたのは、箱舟を作ったり、人々を箱舟から追い払うのが、石の怪物たちだったこと。最初はヘンだと思ったが、古代の感じがして悪くないかも。

戦争を繰り返し、地球を破壊した人類をいったん滅ぼし、動物だけの世界に戻すという発想は、聖書よりも現代的に思えた。だからノアがそれほど狂人にも見えない。

残念だったのは、動物たちが箱舟に乗るシーンはあったのに、洪水の後に箱舟から島へ降りてゆくシーンがなかったこと。これは大事だと思うのだが。

TOHOシネマズ日本橋で見たが、席数の割にスクリーンが大きいし、DOLBY ATMOSでなくても音響が抜群にいい。この映画の洪水の迫力にピッタリ。

ところで当たっている映画と言えば、『超高速 参勤交代』が週末成績で『アナ』に次いで2週連続2位。これはいったい誰が見ているのか謎だ。学生に聞いても誰も見ていない。個人的には頼まれても見に行く気がしないけど。

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