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2014年7月31日 (木)

学生がひどく講義できません

朝日新聞の日曜版beに、「悩みのるつぼ」というコーナーがある。普通のまじめな「人生相談」ではなく、ちょっとひねった答えができる回答者が揃っている。かつては小説家の車谷長吉さんの答えが抜群だったが、辞めてしまった。今の回答者で面白いのは、上野千鶴子と岡田斗司夫の両氏。

先日の岡田氏の答えが、大学教員の私にとっては「激しく同意」するものだった。ネット版でも見られるのでリンクを張っておくが、しばらくは無料登録で全文が読めるはず。

質問者は30代の大学教員で、「意欲・興味をもっている受講生はよくて半分で、1割以下のことも。多くの学生は私語やスマホ、内職ばかりで、注意しても改善されません」。そこでどうしたらいいでしょうという相談。

岡田氏の答えがおかしい。「今やほとんどの大学は大衆化しファミレスと同じになりました。ファミレスで料理に手を付けずしゃべっても叱られません。……高級寿司屋や天ぷら屋では、食べずにしゃべる客はマナー違反で追い出されます。同様に大衆化しなかった大学では、そういうマナーを守る文化も学生も存在します。/あなたが現状に不満なら、高級大学に転職するしかありません」

おもしろいのはそこからで、でも「転職して欲しくはない」と言う。「大学教育はいまや総崩れの撤退戦。私たち教員は毎日の敗北から、やりがいや成果を掴むしかありません/大衆大学にも「ちゃんとした教育」を渇望している学生がいます」「「お客様」な若者を1人でも多く「学生」に育てる。これをあきらめるのが「教育の敗北」です」

つまりはこういうことだろう。コンビニ・ファミレスの現代社会では、大学のレベルの高い授業に興味を持つ学生は少ない。しかしどんな大学にもまじめな学生はいるし、授業のやり方次第で不真面目な学生にも知的刺激を与え、関心を持たせることはできる。それにどれだけ情熱を注ぐかが大学教育だ。

痛いほどよくわかる。200人を超す講義形式の授業だと、難しい抽象的な話を始めると、学生は寝るかスマホをたたくか、私語を始める。そのたびに学生が興味を持ちそうな話題を交えたり、おもしろい映像を見せる。そしてそれを何とか抽象的内容に結びつける。その繰り返し。

昨日で私の大学では前期試験が終わって、いよいよ夏休み。みんなにいいですねと言われるが、後期の授業の工夫がこれから始まる。

考えてみたら、私の学生の頃は、教師は休講や遅刻が多く相当いい加減だったし、学生は授業に出なかった。それでも単位はもらえた。もちろんスマホはなかったし、授業に出る学生はまじめだったので私語も少なかった気がする。さて、どちらがいいのか、わからない。

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